第20回大伴家持大賞入賞作品(一般)

テーマ「見る」

<大賞>
五万個の梨の袋を掛け終える見下ろす湖は輝きており

長谷川 裕子(鳥取県湯梨浜町)

<準大賞>
除染済み連絡受けて我が家見る因幡ウサギか痛そうな庭

門馬 クニ子(福島県相馬市)

<入選>
気怠さと微熱息づく教室をアンモナイトは見つめていたり

小宮山 昇平(東京都町田市)

八十の父は眉間に皺を寄せ口に含みて畑の土見る

水谷 あづさ(奈良県奈良市)

医療器具運び出されてひろやかな処置室の壁に海の絵のあり

林原 京子(鳥取県琴浦町)

<佳作>
スマホ見てパソコンを見てテレビを見るたまには見てねと猫が横切る

和田 真也(福井県敦賀市)

正眼の構えの端に蝗見て一瞬ゆらぎ面を打たるる

金田 典子(鳥取県大山町)

おかあさーんと声をかければ病室の三人の老女いっせいに見る

倉信 範子(鳥取県河原町)

機上から暮れゆくアフリカを見渡せば赤く散らばる煮焚きの炎

村田 一広(山梨県甲府市)

犬を連れ娘見送るバス停の灯りの中に春の雨ふる

吉田 小夜子(長崎県長崎市)

モニターの画面を眺め日を暮らすわが工場に「労働者」をらず

西部 稔(長崎県長崎市)

「右」「左」の漢字の書き方見られおり覚えしばかりの一年生に

山本 弥生(鳥取県米子市)

手にうけし木綿豆腐を賽の目に切れば布目の見えるやさしさ

大沼 和子(神奈川県横浜市)

爪先を見ながら歩く癖のある僕は知らない踵の癖を

原田 祥司(三重県鈴鹿市)

どうしても海抜の字が目に留まる信号待ちのわずかなときも

山下 誠子(鳥取県北栄町)

<審査員 特別賞>
百歳もとしの離れた文吉と虫を見つけて畑で遊ぶ

谷尾 トミ子(鳥取県大山町)