第21回大伴家持大賞入賞作品(一般)

テーマ「顔」

<大賞>
カブトムシ五匹を名前で呼んでいる顔で判ると孫は言いつつ

打浪 紘一(大阪府高槻市)

<準大賞>
雪道を譲って軽く会釈する晩なりましたと顔も見ないで

上嶋 東木(鳥取県鳥取市)

<入選>
生栗の鬼皮渋皮むいている修行僧のごと父と向き合い

稲垣 由香(埼玉県朝霞市)

太鼓打ち「ざんざかざっとう」舞ふ少年らの顔うひうひし笠のあひだに

安田 多加子(兵庫県新温泉町)

カタカナの抑留者名簿を漢字にし読み続ければ顕ちくる顔・顔

小山 美保子(島根県出雲市)

<佳作>
顔認証システムの顔消去され部外者となる本社の扉

中江 三青(鳥取県鳥取市)

ひとつずつ西瓜の顔が見えてくる大山山麓甘き風吹く

小田 龍聖(兵庫県明石市)

ほほゑみに修正されし母の顔額に収まり父と並びぬ

辻 花伝(岩手県九戸郡)

「ヴィヴァルディ聞かせました」と吹き出しの添えられ届く桃の良き顔

坂本 佳子(鳥取県倉吉市)

鏡の中のふたつの顔が老いてゆく我と床屋に時の流るる

清水 良郎(愛知県名古屋市)

悪びれず他所の木で咲く昼顔よおまえはいいなあ出たとこ勝負で

田中 千恵子(神奈川県相模原市)

食い初めの膳に掛けたるのし紙にプリントされた主役の笑顔

伊藤 悠美子(鳥取県倉吉市)

精悍な男の横顔日本海に向く山形に友ひとり持つ

桑田 のり代(鳥取県北栄町)

顔がなき五万の鰯の大群よりはぐれた三匹鰯の顔だ

後藤 正樹(京都府京都市)

「意味あるの?」仏頂面の子を諫め内部被曝検査を続ける

稲垣 みゆき(福島県相馬市)