第23回大伴家持大賞入賞作品(一般)

テーマ「音」

<大賞>
音たちが金色銀色うねる夜野外ライヴの飛び魚になる

堤 朱子(愛知県名古屋市)

<準大賞>
耳の中に鳴り出す電池の尽きる音「もうすぐ世界が遠のきますよ」

生田 延子(鳥取県西伯郡南部町)

<入選>
雨降りの廊下はなぜに長いのか音楽室へ二度目の追試

伊藤 敦(岐阜県各務原市)

赤ちゃんの出す音ぷうぺえぴいがっぽー赤ちゃん笑うつられて笑う

川口 映子(鳥取県鳥取市)

ほろ酔いの尺八の音は外れいて「もとい」とおどけし父の忌が来る

田中 和子(鳥取県鳥取市)

<佳作>
心音をエコーで聞いた水曜日君は現在二十五センチ

西川 佑子(鳥取県東伯郡湯梨浜町)

瑞風をもてなすおどり地曳網終りて集落は音なき夜に入る

中島 正躬(鳥取県鳥取市)

海の音を聞いて育つや大西瓜食べ時きけど今とは言わぬ

柚木 啓子(広島県広島市)

遠山に雷移る音をいぶかしみ種籾浸す桶を洗へり

森元 輝彦(山口県周南市)

冬の暮岬の灯台はや灯りフレネルレンズ音なく回る

小山 美保子(島根県出雲市)

あの屋根にこの屋根に影うごきいて槌打つ音が里にひびかう

本間 温子(鳥取県東伯郡三朝町)

卒業の歌も終わった廃校の音楽室はすごく静かで

阿部 圭吾(千葉県市川市)

跳ねてまたクレヨンの音たしかめて鞄の児らは初夏の径ゆく

和田 康(奈良県奈良市)

お揃いの根付の鈴の音たちが花火の土手へ向かう夕暮れ

篠 孝司(大阪府大阪市)

空豆を叩き実を出す音聞こえ百六歳のわれも手伝いに立つ

谷尾 トミ子(鳥取県西伯郡大山町)