第26回大伴家持大賞入賞作品(一般)
テーマ「持」
<大賞>
下の名ではじめてきみに呼ばれた日ぼくの名前は温度を持った
関根 裕治(埼玉県上尾市)
<準大賞>
家持が未完成の集を持ち赴く因幡まほらはここぞ
藤川 学(兵庫県宝塚市)
<入選>
優勝杯の持ち手は鮎のかたちなり川辺の水の色を映せり
清水 良郎(愛知県名古屋市)
一斉に持ってる日傘たたまれて蝉時雨やみ柩出てゆく
鎌田 誠(北海道札幌市)
国籍を二つ持つ孫一歳になるというのに帰れぬ今年
平尾 潤子(鳥取県鳥取市)
<佳作>
小三治の落語の券を抽出しに持ちてほのほのと待つ弥生尽
牧田 明子(神奈川県藤沢市)
左手で浴衣の袖を抑へつつ娘が確と持つ大ジョッキ
松下 喜彦(埼玉県東松山市)
リモートの理科実験の模擬授業熱きビーカー持ちてカメラに
篠遠 早紀(長野県長野市)
持っててと我言いたれど夫は手を放しはじめて乗れた自転車
牛尾 可奈子(鳥取県鳥取市)
やっと咲く捩花の鉢持ったとき時間が縦に伸びてゆきます
斉尾 邦子(鳥取県東伯郡北栄町)
病室に漫画十冊持ち来る息子おもしろいからぼそりと言って
清水 恭子(京都府木津川市)
各停のごとく卆寿に近づけり鉄道員の時刻を持ちて
小谷 世司人(鳥取県米子市)
頂きし桃を持つ手に香り立つ父の田舎の山々の景
田嶋 淡子(東京都文京区)
空き缶の袋つくづく持ち上げる飲んだ証しのような重さを
舛田 美子(熊本県熊本市)
七輪の上のとうきび素手に持ち熱いと言わぬ祖父の深爪
倉松 こずえ(高知県土佐清水市)