第29回大伴家持大賞入賞作品(一般)
テーマ「家」
<大賞>
築百年の我が家のリフォーム終わる朝木立を越えて初つばめ来る
山口 茂樹(岩美町)
<準大賞>
傘立の中に隠れた怪獣が光りだす夜子ら去りし家
川添 さとみ(福岡県)
<入選>
十歳のわれの描きしその家は「サクラクレパス賞」今も変わらず
北尾 美津子(鳥取市)
空き家には甘葛繁り鮮らけし誰のためでもなき力満つ
貝塚 涼子(茨城県)
カナダへと嫁ぐむすめに「春の苑」持たす英訳家持のうた
下城 公秀(熊本県)
<佳作>
父祖よりの鍛冶の家なり継ぐといふ固き意志もて孫は鎚打つ
前原 和子(岡山県)
誰もいぬ居間に灯をつけ水出せば闇より浮かび家の顔する
宮ア 眞弓(滋賀県)
オムツよりあふるる足のすこやかに吾子の居る家夏雲の立つ
越智 美恵子(米子市)
白杖の我を我が家へ引き寄せる 祖母の愛した沈丁花の香
岩田 麻里(米子市)
かわず鳴く月夜の晩は静かなる光にそっと包まれる家
徳長 典子(鳥取市)
妻逝きてひとり暮らしの三か月生きるというは家事だな妻よ
伊藤 一男(埼玉県)
まだ建てもせぬ家のことで喧嘩をし来月現るる子のことで笑う
土屋 慶文(東京都)
幼な日の玄関横には牛飼はれ鶏床下に住みゐしわが家
松下 二三夫(京都府)
夏の夜の匂ひは遠き祖母の家蚊帳吊りは草の名にのみ残る
前川 泰信(岐阜県)
「実家が」と話しだすとき脳裏にはまだ二丁目の実家がありぬ
吉森 夏香(大阪府)