第30回大伴家持大賞入賞作品(一般)

テーマ「鳥」

<大賞>
「三組の窓の燕の巣は静観」六月職員会議議事録

前川泰信(岐阜県)

<準大賞>
名を呼べばわれに飛び来てせろふあんがふるへるほどの小鳥の鼓動

石井幸子(広島県)

<入選>
鳥たちの疲れた羽根を休ませるかつて私は大樹であった

古賀由美子(佐賀県)

うさぎ住む月のデコボコこの感じ鳥取砂丘はだしで歩く

田内和夫(米子市)

鳥の住む町にはふたつ特徴があってひとつは春があること

北原陸(大阪府)

<佳作>
山鳩が鳴けばあの日に巻き戻る姉さんにまたその手を引かせて

藤沢流凪(千葉県)

鳥ならばあの山越えて行けるのに地図では近い君の赴任地

萩原亜季子(群馬県)

シベリアへいま白鳥の北帰行脳の磁石はチップに非ず

武田悟(宮城県)

着弾にカメラを過る鳥乱れガザの空には硝煙漂ふ

阿部昌彦(新潟県)

田の水を見回る畦に抱卵のをしどりの居て後戻りする

新敦子(鳥取市)

来世では鳥がいいなと祖母が言う畔道に鳴る緩い長靴

楠ナナオ(宮崎県)

羽根ひろげ駆け出していく野良孔雀インドの朝はまだ靄の中

向後彰子(茨城県)

今日海に行かねばカラスになるという旧暦三月三日の奄美

緑川智(茨城県)

誕生日百回迎えられたなら解き放たれてあとはカモメに

斉尾くにこ(東伯郡北栄町)

ナッツ噛みレーズンチョコを口に入れ鳥の食事で飛び出すあなた

築森知子(島根県)