− 有力校話題校 −
「第36回日本海駅伝競走大会」(鳥取陸上競技協会、新日本海新聞社主催)と「南部忠平杯第31回くらよし女子駅伝競走大会」(倉吉市、鳥取陸上競技協会、新日本海新聞社主催)が10月2日、倉吉市営陸上競技場を発着点に開かれる。昨年の全国高校駅伝で男女優勝を果たした世羅(広島)や、中国インターハイ女子1500メートルで表彰台独占の偉業を達成した西脇工(兵庫)など有力校、話題校が年末の都大路を想定し、激しいレースを繰り広げる。注目のチームを紹介する。
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個を生かし確かな力
西脇工 (兵庫、女子)
2016/9/30
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悲願の都大路初優勝を目指す西脇工のメンバー=兵庫県の西脇工高 |
昨年の全国高校駅伝で優勝争いを演じ、過去最高の5位に入った西脇工(兵庫)女子。男子は全国優勝回数8度を数える名門校だが女子の優勝はなく、メンバーの今年に懸ける思いは強い。
女子チームを指揮するのは、就任7年目の前田監督。男子で全国優勝を経験した元選手が母校に赴任し、2014年に21年ぶりの都大路出場に導いた。
指揮官が重視するのは選手との対話だ。「一人一人と向き合って長所を伸ばしてあげたい」との熱い思いがある。「陸上をずっと好きでいてほしい。得意分野でほめられたらうれしいから」
練習は朝に25分間と夕方の2時間程度。「交通が不便で2時間かけて通う選手もいる。女子を遅くまで拘束するのはリスクがある」と前田監督。練習では最初のストレッチなどを一緒にするだけ。個を尊重し、メニューは各自に任せる。「受け身の練習は考えなくなるし、続かない。女子は体調変化も大きい」と選手を「大人扱い」し、工夫を求める。
目に見えないチームづくりにも力を注ぐ。選手同士のミーティングに時間を費やし、ばらばらな練習でも思いは共有した。あえて同じ練習をさせてチーム意識を高めた。そのため選手の目標にぶれはない。中国インターハイ(IH)1500メートル優勝者の高橋は「チーム日本一を目指す」と断言する。
高橋以外にも有力なメンバーがそろった。田中は1500メートルで日本選手権とIHで2位、後藤はIHで3位に入ったが、満足する様子はない。
田中は昨年の都大路1区で最後に抜かれて区間2位になった悔しさを忘れていない。「強い勝ち方を見せる」と闘志を燃やす。後藤も「ラストスパートは絶対負けない」と強い気持ちで練習に取り組む。
前田監督自身も1994、95年の日本海駅伝を制し、都大路2連覇につなげた。「結果が出ればチームに勢いがつく大会」と指揮官。くらよしでは「今季初戦で都大路を占う大会」と位置付け「駅伝独特の緊張感の中で主導権を握って優勝争いを経験したい」と意気込んだ。(薮田勝)
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【学校紹介】 日本の“へそ”とPRする兵庫県西脇市にある1963年創設の県立高。校訓は「自律、創造、誠実、勤労」。生徒数は707人。陸上部OBには2010年の東京マラソンを制した現中大駅伝部監督の藤原正和氏、シドニー五輪女子マラソン7位の山口衛里氏がいる。 |
校名刻む"ラストラン"
小豆島 (香川)
2016/9/29
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あずき色のたすきを掛け、男女で都大路出場を目指す小豆島のメンバー=香川県の小豆島高 |
小豆島(香川)は今季の駅伝が現校名で挑むラストラン。ピーク時500人を超えた生徒数が279人に減り、来春から島内の高校との統合が決まっている。就任5年目を迎える荒川監督は「男女とも都大路出場を勝ち取り、全国に校名を残したい」と意気込む。
島特産のオリーブ園のそばにある学校のグラウンドで、島内から集まる25人の部員が汗を流す。
男子の合言葉は20年以上「打倒尽誠」。県内1強の尽誠学園が全国大会の前に立ちはだかる。校名の刻まれたあずき色のたすきをつなぐ最後のレースを前に、その思いは一段と強い。
男子の真砂主将(3年)は「日本海駅伝で全力を出し切り、全国クラスのチームにどこまで食らいつけるか試し、都大路で有終の美を飾れるようにしたい」と力走を誓う。
女子は2010年に都大路に初出場した。今チームは受験勉強のために3年生が抜け1、2年を中心にした編成になる。昨年の都大路で56位の悔しさを晴らそうと練習メニューを工夫する。ジョグ練習後、脚を大きく繰り上げて走るミニハードル走を取り入れ、走りのリズム感を養う。
くらよしに向け、女子の藤田主将(2年)は「県、四国の大会と違い、全国チームと走れる。最初からハイペースで臨み、少しでも前の選手についてきたい。県や四国の大会と違う雰囲気や緊張感も楽しみ」と練習に打ち込む。
荒川監督は「沿道の声援を受けながら走れ“これぞ駅伝”と感じられるのが日本海、くらよし駅伝の魅力」と選手ととも出場を楽しみにする。「男子は1区から全力疾走で挑む。女子は前半からしっかり競り合い、後半勝負で前に出たい」と全国高校駅伝出場に向けて期待を込める。(吉田吉伸)
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【学校紹介】 香川県小豆島町の普通科の県立高校。1920年小豆島高等女学校として発足。49年の高校再編成により現校名となる。野球部は21世紀枠で今春の選抜大会に出場。OBにプロ野球元中日の村上義則氏、大相撲の琴勇輝がいる。2017年に土庄高と統合により小豆島中央高となる。 |
力出し切り連覇狙う
倉 敷 (岡山)
2016/9/28
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「チームの力を出し切り、好成績を」。畝主将(右)を先頭に、日本海2連覇と全国上位へ走り続ける倉敷のメンバー=倉敷運動公園陸上競技場 |
第29回大会(1978年)から全国高校に最多の38回連続出場を誇る倉敷(岡山)。2011年の62回大会で準優勝し、昨年は日本海を初制覇。その勢いに乗り、全国では2時間3分8秒で3位に食い込んだ。昨年の都大路を経験したメンバー5人をそろえ、日本海2連覇と全国の頂点を見据える。
部員26人を率いる勝又監督は「総合力は現時点では昨年の方が上。一人一人の力をアップさせ、昨年以上の力で都大路へ向かいたい」と地道な戦力アップを目指す。
選手は朝、学校周辺でのジョグをこなし、放課後からは学校から西へ5キロほど離れた陸上競技場に移ってスピード練習に励む。上半身のブレをなくすよう体幹トレーニングを採り入れ、ランニング姿勢を安定。全身のバランスを保ちながら走力アップを図る。
昨季の都大路2区で区間6位の名合、3区区間3位で11人抜きを演じたケニア人留学生のニジオカ、4、5区を担った前田舜、若林が順調に力をつけてきた。
1区のトラックで転倒し、一時最下位になりながら、19位まで浮上してたすきをつないだ畝拓が主将を務める。今年の都大路に向け、「スタートから上位争いに食い込みたい。都大路の借りは都大路で返す」と雪辱への思いは人一倍だ。
日本海では畝拓と名合、前田舜、若林に中国インターハイ3000メートル障害を2連覇したムァゥラ、インターハイ5000メートルを制したニジオカをA、Bチームに分けて挑む。
畝拓主将は「昨年の日本海での走りが都大路入賞につながった。経験のない選手が力をつけたり、現チームの力を探る絶好の機会。今年もチームの力を出し切り、好成績を残したい」と力を込めた。
(吉田吉伸)
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【学校紹介】 岡山県にある普通科、商業科の私立高校。1960年、岡山市北区に福井学園中国商として創立され、66年に倉敷市に移転し、岡山日大から83年現校名に改称した。卒業生には元広島の剣持貴寛氏らプロ野球選手がいる。 |