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  高校生の部 最優秀賞作品紹介
中田 多笑さん(鳥取東高1年)
4月27日付日本海新聞 「シカの生息域 急拡大 農作物の被害絶えず」を読んで
 だんだん暖かくなり、植物の成長が目に見えて感じられる。そんな中で祖母の話を耳にした。「またシカにやられただが。植えとったさつまいもの葉を全部食べられたわ」私の家は農家で、度々イノシシやサル、シカの被害に遭っている。祖母の話を聞いた時は、大事に育てとったのに残念だったなあ。と聞き逃していたが、シカについてのこの記事を見つけて、詳しく知りたいと思った。

 まず、祖母にシカの事を聞いてみた。お盆やお彼岸の時期に山のお墓に供えていた花を食べ尽くしたり、柿の葉を食べたりしていたそうだ。シカに悪気はないことが分かっていても、心を込めて大切に作った作物をダメにされた農家の方々は、悔しさが募っているだろう。何か対策をしているのかたずねたところ、畑を囲んでいる柵に電気を流したり、動物が寄らないよう派手な色のライトを付けたりしているそうだ。低い柵だと飛び越えて畑に侵入してくるため対策が大変だと話していた。

 そんなシカが近年増え続けており、各地で被害が絶えず出ているそうだ。シカは木の皮も食べるため樹木が枯れて裸地化し、土砂崩れや洪水の危険性が増すということをこの記事で知った。人が把握しきれない山の中でこんな事が進行していると思うとぞっとする。最近はゲリラ豪雨が増えているためますます注意が必要だと感じる。このことから、シカの捕獲を進め、一刻も早く適正な個体数にまで減らすべきだが、狩猟者、つまりハンターが不足しているのが現状だ。私の住んでいる地区でも、シカを捕獲できる人は限られており、高齢になられている。そのため若者がどう受け継いでいくのかが重要となってくるだろう。最近はジビエブームもあり、少しずつハンターを目指す若者が増えているが、危険を伴うなど負担は大きい。このような狩猟者の負担を減らすために若桜町で行われている取り組みがあるそうだ。若桜29工房ではシカなどの肉を処理し、ジビエ肉や犬用のご飯に加工して出荷することで余すことなく活用している。以前は猟師が山に獲物を埋めており負担が大きかったそうだ。このような取り組みが増えると猟師の方はより従事しやすくなるだろう。

 もともとシカが住んでいた所に人間が住み出したのであり、シカを狩り処分するのは気の毒だと思う人もいるかもしれない。しかし適正な個体数にまで減らさないと今まで以上にさまざまな被害が出ることを実感した。狩られたシカなどの動物をただ処分するのではなく若桜29工房ように自然の恵みとして活用するすてきな取り組みが増えるといいなと思う。もっとたくさんの人がこの課題に目を向けて、ハンターの負担を減らしたり、若い人が狩猟に興味を持てるような環境づくりが進むことを願う。


中田多笑さん
《コメント》
 祖父母が管理する畑が動物によって荒らされていると普段から聞いていましたが、どこか人ごとのように感じており、被害の深刻さや課題に気づけたらという思いからこの記事を選びました。被害を受ける人間にとっては迷惑なことですが、動物にとっては普通の生活の中で起きていること。捉え方が難しかったです。下書きを繰り返し、2日くらいかけて仕上げました。思ってもみない受賞の知らせを受け、祖母に報告すると、とても喜んでくれました。


記者コメント 新日本海新聞社 井上昌之
 以前、八頭郡で周囲をネットで覆った家を見つけました。そうしないとシカが庭木の葉を全て食べてしまうのです。中田さんの素晴らしい感想文が山奥で静かに進むシカ食害への関心を喚起する機会になればうれしいです。


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