昨年11月、高知市に寄付などによってイスラム教徒の礼拝所「モスク」が誕生した。記事には、外国人労働者の孤立、日本で直面した文化の壁が紹介されており、今回建てられたモスクは、それらの問題を解決するための2つの役割を担っている。まず1つ目の役割はイスラム教徒が安心して過ごせる居場所であるということだ。外国人労働者の多くは地域とのつながりが薄く、休日を家にこもって過ごしたり、言語の壁によって日常生活に不安を抱えている。モスクで同じイスラム教徒の人と礼拝を行ったり、コミュニケーションをとる事で、そうした不安・孤独を解決できる。そして2つ目の役割は日本人と外国人の交流の拠点である。先述の通り、外国人の多くは言語の壁や文化の壁によって日本人や地域とのつながりが薄い。このモスクは、コーランの読誦やヒジャブの着用体験などのイベントを実施し、外国人と日本人をつなげる場、互いの文化を理解して偏見や先入観を無くしていく場として順調に機能している。
一方で外国人との交流が進まず偏見や先入観が解消されない場合、社会が問題を取り上げるときに論点設定を誤ることがある。
例えば最近のニュースでは外国人の不動産所有が「外国人問題」として取り上げられた。匿名性の高い方法で不動産を所有しており、トラブル発生時に、管理人を特定できず、住民や自治体が対応できないケースや、北海道ニセコでは投機目的で購入された別荘が空き家となり、地域の活気が失われていると紹介された。
しかし不動産の匿名所有、空き家の放棄といった問題は国籍を問わず、誰もが起こし得る。その根本的な原因は国籍ではなく、地域とのつながりが薄い事、管理・責任の欠如にあるにもかかわらず、報道が「外国人」という属性を強調してしまうと、視聴者は問題の本質ではなく国籍に意識を向けてしまう。これこそが外国人に対する偏見による論点設定の誤りである。
以上の事実から僕はメディアの報道やそれを受け取る僕らの中にある外国人に対する先入観や偏見が外国人問題をより複雑にすると指摘する。実際に僕自身も国籍に注目して外国人の行動を理解しようとしていたが、それは偏見であり、先入観を形作っていた。
偏見や先入観は直接の交流や相互理解によってしか薄れない。多様な他者に触れる事で僕たちは相手を国籍でひとくくりにできなくなる。今回紹介した高知市のモスクは外国人の居場所となると同時に、文化交流を通じて偏見を無くし、国籍に縛られないつながりを創る場として順調に機能している。
僕自身も積極的に地域や外国人と交流し、理解を深めていきたい。
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