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受賞作品 感想文部門
「仲間と助け合って」
蓮佛 藍子
鳥取市立河原第一小学校5年 「さくら 原発被災地にのこされた犬たち」(金の星社) |
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この本を読み終わった時、私は「ええ、これで終わりなの」というおどろきと不安で胸がいっぱいになった。さくらは、ひとみちゃんに会えるの。ひとみちゃんは、さくらに会えるの。さくらとひとみちゃんが会えることを、ただただ願いながら読んでいた私にとって、この終わり方は何とも言えない感じがして、すっきりしなかった。
しかし、しばらく時間がたって考えてみると、あんな大震災があったのだから、全てがハッピーエンドというわけにはいかないのが現実なのかなとも思えてきた。さくらやひとみちゃんだけでなく、今でも大切な人とひきさかれたままの人がたくさんいるのだろうと。本を読み終えた時に感じた私の不安な気持ちは、今も被災地では続いているのだろう。正直に言うと、私はあの大震災のことを少しわすれてきているのだと思う。被災地から遠いこの鳥取県に住んでいること。今までにこんな深刻な状況におちいったことがないこと。この本を読んで私はそう感じた。
ただ、引きさかれてつらい気もちだけではなく、家族の絆や生きていくための力強さもこの本から感じた。それは、強制避難のため一人取り残されたさくらが、ひとみちゃんをさがしながら必死で生きていこうとしていたからだ。さくらの生活は容易ではなかった。何しろ今までは、家族から愛され食べ物も与えられる生活だったのに、生きるためにそのくさりをかみ切って、食べ物をさがさなければならなかったのだから。取り残された犬たちは群れを作り、食べ物を取り合ってけんかをすることもあった。犬たちも必死なのだから。でも、さくらは、ひとみちゃんのことを思い出し群れの中に入ることをためらっていた。そんな中出会ったのがクロだった。優しいクロは、一人ぼっちのさくらを守るようにそばにいてくれた。さみしくなっていたさくらの心を少しずつうめていってくれる存在になっていた。そして、助け合いながら生きていた。動物たちは、新しい仲間を作って助け合って生きているのだ。どんなに厳しい状況の中でも、生きる道を探して生きる力を持っている。人間もそうだ。大震災という未だ経験したことのない絶望的な状況を乗り越えて、人間も助け合って生きている。様々な国の支援、がれきの撤去作業。今も続く不明者の捜索、夢と希望を届ける交流活動など。様々な自分にできる形でつながっているのだ。
私の生活もそうだ。クラスの仲間と助け合っている。当たり前のことのようで、わすれそうになるけれど、今いる仲間が楽しい時、悲しい時を一緒に分かち合える仲間なのだ。どんな時も、助け合って、一歩一歩前に進む気持ちを持っていれば、きっと乗り越えられる。きっと、さくらとひとみちゃんも、再開できる日が来ると信じて、毎日を生きていくだろう。私も、どんなことがあっても、助け合うことをわすれずに、仲間を大切にし、あきらめず前を向いて歩いていきたい。
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