− 有力校 話題校−
「第32回日本海駅伝競走大会」(鳥取陸上競技協会、新日本海新聞社主催)と「南部忠平杯第27回くらよし女子駅伝競走大会」(倉吉市、鳥取陸上競技協会、新日本海新聞社主催)は30日、倉吉市営陸上競技場を発着点に開かれる。全国高校駅伝の男子で8回の最多優勝を誇る西脇工(兵庫)、都大路の“常連”ながら「くらよし」初登場の神村学園(鹿児島)など有力校、話題校が数多く出場する。今年はどのようなレースが展開され、どのようなドラマが生まれるのか、注目のチームを紹介する。
節目に新たな挑戦
西脇工・男子(兵庫)
2012/9/28
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新たなる挑戦を掲げ、走り続ける西脇工の選手=兵庫・加古川陸上競技場 |
玄関に所狭しと並んだトロフィーや賞状の数々。全国最多の8度優勝を成した名門が、学校創立50周年の節目に掲げた目標は「新たなる挑戦」だ。
2009年春、名将渡辺公二監督からチームをを引き継いだ足立幸永新監督。昨年、2年ぶりの都大路出場で4位に入り、新生西脇工をアピールした。
光ったのは7区以外1、2年生を起用した思い切ったオーダー。「3年生を突き上げる下級生の気持ちがうまく結びついた」という。
目指すのは「速い、じゃなく、強い選手。勝つ、じゃなく、負けないチーム」。選手のチャレンジ精神、どんな状態でも力を発揮できる調整力を育む。
陰で努力する選手を選手同士で推薦し表彰する「陰得賞」は足立流やる気喚起法。目の届かない場所でも競わせる。
「意志道拓 新たなる挑戦」。強い志で自ら道を切り開くという目標に向かう今チーム。「新た」の意味を周囲は「9度目の全国制覇」ととらえがちだが、足立監督は「階段を十段飛ばしするようなもの」と釘を刺す。目指すのはあくまで、目の前にある一段、一段だ。
昨年の都大路3区で9人抜きを演じた大黒柱の中谷はアジアジュニア、ベルギー遠征に参加。世界に触れ、負けず嫌いに火がついた。
藤原、磯口、山本ら元気な2年生に対し、3年生の牧浦、村上らは5000メートル14分台前半の実績がある。チーム内の競い合いで全体の力をどう高めていくか。足立流の手腕が見ものだ。
10度目の優勝が懸かる「日本海」も特別意識はしない。夏合宿を終えた選手らが「どんな失敗をしてくれるか楽しみ」(足立監督)。都大路の試金石として大きな収穫を狙う。
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【プロフィル】日本の“へそ”とPRする兵庫県西脇市にある1963年創設の県立高。陸上部の卒業生には藤原正和(ホンダ)やシドニー五輪7位の山口衛里らがいる。
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新戦力加入で結束
豊川高・男子(愛知)
2012/9/26
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「ベストを尽くして、豊川工に勝つ」。一つの目標に向かい、チームの士気が高まる豊川=豊川市の同校グラウンド |
今年の愛知は熱い。14連覇中の王者豊川工の牙城を、常に苦杯をなめてきた豊川が崩すか−。勝者がそのまま全国制覇を成し遂げてもおかしくないだけに、全国最激戦区の戦いはいや応なしに注目が集まる。
3月、強豪の仙台育英(宮城)から男女10人が転入した。男子は昨年の都大路を走った服部、土屋、一色ら主力を含む7人。5000メートルで13分36秒を持つインターハイ王者の留学生カレミ以外にも、長距離区間を任せうる大砲の加入で全国屈指の布陣となった。
論議を呼んだ集団転入だったが、仙台から来た彼らも半年間の高体連試合出場禁止という大きな代償を払った。インターハイにも出られず、ひたすら練習に明け暮れた日々。「強い子が転校して必ず走るという保証はなかったし、悔しい思いは彼らなりに解決してきたと思います」。今年から女子に加えて男子も見てきた森安彦監督は、目の前を走る選手らを見ながらつぶやいた。
転入生の存在は「チームのまとまりをより一層強くした」と鈴木主将。新たに設けられた男子寮にもともといた選手数人が入寮。「『レベルの高い彼らと一緒にやりたい』って言ってきて。意識改革ですよね」と森監督。駅伝で勝ちたい、全国で走りたい−。その強い思いが“新生豊川”をまとめてきたもの。5000メートルの平均タイムは昨年同時期の15分から、14分20秒まで飛躍してきた。
日本海駅伝がこのチームの初駅伝。11月4日の愛知県大会を見据え、夏場の成果や選手の適性を見極める場となる。「ライバルの豊川工は関係ない。自分たちのやることをちゃんとやるだけ。そうすれば結果はついてくる」(森監督)。初の都大路への第一歩が始まろうとしている。
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【プロフィル】1928年創立の私立高。女子駅伝部は創部2年目に全国上位入賞を果たすと、08、09、11年と3度の優勝を誇る。転入生も加わって力を増した男子はライバルの豊川工を倒し、都大路初出場を目指す。 |