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受賞作品 感想文部門
平和をじゃまする最大の敵
亀尾茉央さん
南部町立西伯小学校6年
「もしも学校に行けたら アフガニスタンの少女・マリアムの物語」(汐文社) |
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三十年以上続いたアフガニスタン戦争は終わった。長きにわたるタリバン政権は崩壊し、平和になったとマリアムの家族も話す。しかし、マリアムは十分な教育を受けることができない。母親は毎日食べ物の心配をし、兄は学校に行かず働かなければならない。「平和」とは、いったいなんだろう。
私はもっとマリアムのような子どものことが知りたくなり、後藤さんの他の著書や違うジャーナリストの本を読んでみた。世界には、私が知らない紛争がたくさんあった。紛争がやんで何年たっても、戦争で失ったものを取り戻せないまま貧しい生活の中に取り残されている人もたくさんいた。そして、建物や街の風景は元にもどっても、人の心に刻まれた憎しみや悲しみは決して消えない。
理由はどうであれ、戦争というものは、人間同士が殺しあうもの、社会や家族を破壊するもので、心も体も最も傷ついているのは、そこに暮らす人々だ。テロのニュースは、毎日と言っていいほど報じられているのに、その裏側でたくさんの人たち一人一人の失ったものや家族、生活する苦しみを想像すらしたことがなかった自分にショックを受けた。
アフガニスタンの首都カブールは、きれいな街になり、一見復興が進んでいるように見える。そこには、日本の国際援助金も使われている。しかし、その一方で、小麦や毛布などの生活に必要なものは不足しているという。少し地方に行くと、まだまだ学校の数も先生の数も足りない。働くために学校に行けない、あるいは行くことをやめてしまった子どもたちは以前よりも増えいているらしい。
後藤さんは、マリアムの母親を説得し、退学命令を出した校長とも話をする。後藤さんの存在があって初めて学校に行きたいというマリアムの願いが実現した。本当に必要なことは、大きなショッピングセンターを建てることではない。たった一人の人にでも手をさしのべることなのだ。
今、自分が生きているこの時を同じように生きている人にまず何をすべきなのか、考えるきっかけを後藤さんは教えてくれた。誤爆により住んでいる家を無くしたマリアムの家族、爆撃で手や足を失った人、貧困に苦しみ学校に行けない子ども、一人一人に生活があり、弱い立場の人たちがどんな思いなのかを真剣に考えることから始めたいと思う。
平和とは、戦争のないことではない。そこに住む人が、おだやかに生活できることだ。戦争の終わったアフガニスタンの平和をじゃまする最大の敵は、私たちの「無関心」であると思う。遠い異国のことだと見ないふりをしてはいけない。私たちは、相手の立場になって物事を考え、相手の思いに共感する想像力を持っている。私ができることは小さいかもしれないが、決して無力ではない。世界に起こっていることに向き合い、考え、自分の思いを行動に移す強さで明るい未来をつくり出したいと思う。
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