− 都大路へのステップ−
「第31回日本海駅伝競走大会」(鳥取陸上競技協会、新日本海新聞社主催)「南部忠平杯第26回くらよし女子駅伝競走大会」(倉吉市、鳥取陸上競技協会、新日本海新聞社主催)が10月2日、倉吉市営陸上競技場を発着点に開かれる。駅伝シーズンの始まりを告げるこの大会には、暮れの全国高校駅伝に名を連ねる強豪校に加えて、近年力を付けつつある新興勢力などが多数集結する。都道府県高校駅伝、そして都大路へとつなげたいそれぞれの思いを知るため、胸高鳴るステップレースを前にした出場チームを訪ねた。
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女王の座奪還へ闘志
韮崎高(山梨)
2011/09/30
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夏場の走り込みを乗り越えてたくましさを増した選手たち。「くらよし」では入賞争いを狙っている=山梨県韮崎市の韮崎中央公園陸上競技場 |
全国高校駅伝出場12回と、山梨県の女子駅伝はこれまで韮崎高の独壇場だったが、近年は山梨学院大付高とトップを分け合う構図。ここ2年は都大路から遠ざかっている。同校に赴任して15年目を迎える輿水勝美監督は「何としても今年は都大路を取りにいきたい」。静かな闘志が垣間見える。
放課後、学校から約3キロ離れた韮崎市内の陸上競技場まで走っていくのが陸上部の日課。だらだらと続く坂道が、彼女たちの力を日々蓄える。週4日は競技場でポイント練習を行い、2日は軽いロード走などを各自で考えて取り組む。
選手が走っている最中、監督はあまり言葉を掛けず、じっくり見守る。選手との対話は終了後に一対一で行う。その口調は柔らかい。「決して走れないタイムじゃないから、頑張ろう」。気を付けていることは、なるべく誉めることだ。
輿水監督の前任校は、男子の駅伝強豪校に育った山梨農林高。「女子の指導は韮崎が初めてだった。最初はどうしていいか、本当に分かりませんでしたよ」と明かす。山梨農林高時代は厳しい指導で知られ、周囲に「怖い監督」の印象を与えた。当時の教え子たちは、監督に会えば今でも直立不動になる。そして、柔らかい物腰で指導に当たる韮崎高での姿を見て、あぜんとするという。
「おい、ちゃんとご飯、食べてるか?」。走りのおかしさが引っ掛かったある選手に、こう切り出した。少し体重が増えたから食事量を減らしたという選手。監督はやっぱりという表情で「駄目だ、それじゃ。ちゃんと食べてもきっちり練習すれば、元に戻るから」。
少しの会話でもいいので、細かくコミュニケーションを取るようにしている。そうしないと、小さな変化を見過ごしてしまう。「男子だったらここまでしません。女子の指導は難しいですねえ。心の中がなかなか読めなくて」と本音もちらり。退職年齢が近づいてきたベテラン監督だが、よりいい指導ができないかと日々模索する。
「くらよし」は「日本海」と同時開催になって以降、ずっと出場している。大会日程が夏休み終了後ちょうど1カ月あたりで、夏の疲労が取れた状態で臨めるレース。夏合宿の成果や選手の持つ力を測りやすい。
「くらよし」の出来がいいと県予選の結果もよく、その年を占う大会になっていると輿水監督は言う。エースの鈴木、1区起用も考えるほど実力が付いてきた2年生の古屋らを中心に、目指すは県女王の座の奪回。今年も確かな手応えをつかみに、山梨からマイクロバスで8時間かけて山陰へ乗り込む。
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【韮崎高】山梨県韮崎市の生徒数約950人の県立校。全日制普通科、文理科と定時制普通科を設置している。学習と部活動の調和を図る「一人二芸」を推進しており、サッカー部、弓道部、山岳部などインターハイで全国優勝している部活動多数。卒業生にサッカー元日本代表の中田英寿さん、横内正明山梨県知事ら。 |