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受賞作品 感想文部門


  鳥取県議会議長賞
平和を願いながら

大山 裕未
倉吉市立西郷小学校5年


 たった二時間半で、十万人以上が死亡、四万人が負しょうし、百万人もの人が家を失った東京大空しゅう。この本はそんな空しゅうの中、必死に生きようとする昌男とお母さん、のら猫の稲妻と四ひきの子猫たちの話だ。読むうちに、その光景がひしひしと伝わってきて、私は何度もなみだがこぼれそうになった。

 強い北風にあおられ、火の粉がふりそそぎ、あちこちで火柱が上がる中、必死に子どもたちを守りながら、やっとの思いでたどり着いた空地で再会した稲妻とお母さん。子どもを命がけで守ったふたりには、きっと信らいの気持ちときずなが生まれていたにちがいない。これでもうだいじょうぶだよ。私は胸があたたかくなるのを感じた。しかしほっとしたのもつかの間、B29の攻げきを受け、妹の光代は死に、昌男はお母さんと、稲妻はひい吉とはなればなれになってしまう。昌男たちが何をしたというのだろう。武器を持たない者をなぜ攻げきするのだろう。これが人間のすることだろうか。私の心はいかりでいっぱいになった。そして、何もかも焼きつくす戦争のおそろしさを知った。

 「もう助からない。」そう思ったお母さんが、自分のつめをはがしながらかたい地面にあなをほり、チイちゃんとひい吉を中に入れ、自分がふたになってばくげきから守ろうとした場面や、昌男が最後の力をふりしぼり、稲妻と子猫たちを助けた場面では胸が痛くなった。何かを守ろうとする気持ち、それがこんなに人を強くするのだろうか。守ろうとするものがあったから、そしてあのあらしの夜、子猫を口にくわえ、必死で水の中を泳いでいく稲妻の姿がいつもこころにあったから、昌男もお母さんも最後まで精いっぱい生きることができたのだろうと思った。

 ひげが焼ききれ、あちこちにやけどをおいながらも生き残った稲妻たちは、とうとうひい吉を見つけることができた。ひい吉のこともお母さんが命がけで守ってくれたんだ。私は心からうれしかった。稲妻たちは、昌男のお母さんの指や顔をなめ、きれいにしてあげた。「稲妻と子猫たちは、こんなにしずかな、うつくしい人間の顔を見たのは、はじめてでした。そして、また、さいごでもあります。」ここを読んだ時、私は目があつくなり、なみだがこぼれそうになった。戦火の中で生き残った稲妻たち。精いっぱい生きること、そして命の大切さを知っているからこそ、これからもたくましく生きていくだろう。昌男たちの分までしっかり生きて。そう思った。

 世界には今でも戦争をしている国がある。そしてそのぎせいになり、苦しく悲しい思いをしている人々がいる。テレビで戦争のニュースを見ても、今までの私には「かわいそうだとは思うけど、遠い国のことだから。」と思う気持ちがあった。人と人とが殺し合い、罪のない人たちまでまきこむ戦争は決して起こしてはいけないのだ。そのために何ができるのか考えていこう。それが私の課題だと思った。
(「猫は生きている」理論社)


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