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受賞作品 感想文部門
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「もっと知りたい。」それが友達への第一歩
渕 志穂里
国立鳥取大学附属小学校3年
「きりんゆらゆら」 くもん出版 |
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私の家のリビングに、大切にかざってある一枚の写真がある。幼ち園のうら山で、のんびりと、しいの実拾いをしている年少の時の私とT君だ。このころの私は、正にこの本の中の「クワガタ君」で、T君は「荒太」だった。本の中の二人と、写真の中の自分達とが重なって、読み終わってしばらくの間、私はじっと写真を見つめていた。
検診で精みつ検査をすすめられるほど、発達がおくれていた私は、幼ち園で「○○しよう。」とさそわれても、全くみんなにはついていけなかった。入園して半年、いつもお気に入りのガーゼのハンカチが手放せず、一言もしゃべらない私に、ある日T君が声をかけてきた。「志穂里ちゃんは何がしたい?」初対面の荒太に、突然「友達になろっ。」と言われた時のクワガタ君のように、私もびくっとした。しゃべらない私のそばに、毎日来てくれたT君。「志穂里ちゃんがしたい遊びを、ぼくと一緒にやろうよ。」そう言って、本当に毎日してくれたのだ。リビングの写真は、そのころのものだ。安心感いっぱいの笑顔の私。川原で、荒太に初めてしゃべった時のクワガタ君も、きっと写真の中の私と同じ気持ちだったと思うな。
お兄さんの事故死以来、一言もしゃべらなくなったクワガタ君を、クラスのみんなは、ただだまって見ているだけだった。でも、転校生の荒太はちがった。「クワガタ君のことをもっと知りたい。」と、一生けん命だった。その荒太の気持ちが伝わったから、クワガタ君は荒太に少しずつ心を開き、ずっと言えずに苦しんでいた「事故の原因はぼくなんだ。」という一言を、お母さんに言う勇気を持てたのだ。荒太がいつも自分のことを見てくれていたことが、クワガタ君の中で、とっても大きな力になったのだと思う。年少の時の私が、そうだったように。T君が、「○○しよう。」ではなく、「何がしたい?」と言ったのは、私のことを本当によく見てわかってくれていたからだ。T君のおかげで、私もクワガタ君と同じように、大きく変われたのだ。
川原でねころんで、笑いながら話す二人の会話を読みながら、私はあたたかい気持ちで本を閉じた。クワガタ君が女の子だと知っておどろいた荒太だったけど、二人の間には、今までと何も変わらない、やさしい空気が流れている。信頼感あふれている。こんな風に私もなりたい。その第一歩は、荒太のように、「相手のことをもっと知りたい。」と思うことだ。そこから始まり、相手を理解していく中で、信頼感が生まれるのだ。私は友達と広く浅く付き合うタイプで、それで十分楽しく満足していた。でも、本当は昔の荒太と同じで、傷ついたり傷つけられたりするのがこわくて、深くかかわることからにげていたのかもしれない。こわがっていないで、私も荒太のように、第一歩をふみ出してみよう!大好きな、そして大切な友達と、これから先ずっと長く付き合っていくために・・・。
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