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受賞作品 感想文部門


  新日本海新聞社社主賞
ナシ玉ってすごいね

中村 珠蘭
岩美町岩美北小学校4年


「新版ファーブルこんちゅう記 (1)」
タマコロガシものがたり 小峰書店


 たった一つの牛のふんに、多くのタマコロガシが集まっている。その様子をじっと見ているファーブル。タマコロガシがふんを運びながら、何度も坂をころげ落ちてもくじけないで、またのぼりはじめる姿を見て、ファーブルは、ゆめがやぶれて落ちこんでいる自分をはげましふるいたたせている。

 他の人であれば何気なく見すごしてしまう小さな一匹の虫にも、虫なりの生活があり、生きる知恵がある。それを根気強く観察し続けるファーブル。人間を見る目と同じように虫に接しているから、虫の気持ち、虫のかしこさも読みとれるのではないかと思う。しっかり観察しているからこそ、虫の一挙一動が意味をもっていることに気付くことができる。虫眼鏡でないと観察できないような体の部分にも、人間の体と同じような役目をすることにも気付く。

 タマコロガシの作った一つの玉には、ナシ玉のように子孫を残す大切な玉がある。どの玉よりも材料選びには気を使い、ねっとりとしたヒツジのふんを探し出している。たまごが安全に育つであろう形を考えて、心をこめて作っている。そんな虫の生態に気付き、多くの時間を使って調べていくファーブルの姿。ナシ玉の細い首に注目するまでの長い時間をあきらめないでさぐり続ける。人間の子宮と同じように命をはぐくむ大切なナシ玉。その中で育つたまごの様子を、生まれつき持っている不思議な知恵を、どうにかして分かりたいと、子むしと知恵くらべをしているファーブル。ファーブルが穴をあけると、子むしがふさぐ。その様子を読んでいると、おもしろくなり、「簡単に教えてはダメだよ。子むし。」と、子むしの応えんをしたり、「早く、なぜ穴をふさぐのか見つけてよ。」と、ファーブルを応えんしたりしてしまう。わけが、空気だと分かると、なるほどと感心する。

 また、成虫になったタマコロガシが、自然を上手に利用して、雨の日に喜び勇んで出てくる様子を読むと、なんというかしこさだろうとためいきまで出そうだ。

 ファーブルだけでなく、二千年以上も前にアポローンも、タマコロガシを観察していたとは、もっとおどろいてしまう。アポローンの説が本当かどうかと解明していくファーブルもすごいと思う。

 他の人にとっては何でもないようなことでも、不思議だな、どうしてだろうと追求していくことの楽しさを、ファーブルこんちゅう記を読むと教えてくれる。観察する虫と、心を通じ合わせるように調べていくファーブル。観察することがたいへんだなんて思ってもいない。ハードルが高ければ高いほど、おもしろがって挑戦している。「ひみつにしてもむだだよ。」と言いながら、虫と知恵くらべをしているファーブルの様子は、いつ読んでもおもしろい。



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