受賞作品 感想文部門


  入選
「キサトア」を読んで

永井 里沙
琴浦町八橋小学校6年


「キサトア」 理論社


 「キサトアって、何の意味なんだろう。」

 これが、この本の第一印象であり、この本との初めての出逢いだった。読み進めていくうちに、「風」「水」などの自然に対しての興味が、どんどんふくらんでいった。

 主人公アーチの父フウガさんは、世界でも数少ない「エキスパート」で、気配だけで風が読める「風のエキスパート」だ。そんなアーチ達が、この町に引っ越してきたのは五年前。アーチには、六歳になった双子の妹、キサとトアがいるが、三人一緒に遊んだことはない。キサとトアは、日の出日の入りに合せて起きたり寝たりする病気のためにすれ違い、わたし達がふつうにしている会話ができないのだ。それでも、いつか三人で笑い合うことを夢見る前向きなアーチを、わたしたちはすごく好きになっていった。

 そんなわたしも最初は、キサとトアのことを「かわいそう。」としか思っていなかった。しかし、家族や友達、そして町の人みんなに愛され可愛がられているキサとトアが、最後にはうらやましくなっていた。なぜ、そう思ったのだろう。父さんが色を失ったアーチに言った言葉が、わたしにも大事なことを伝えてくれた気がする。「キサとトアのことも、おまえが色を失ってしまったことも、すべては、あるがまま。」「何かを失っているんじゃない。逆に何かを得ているんだ。」

 地球上で「大きく動く二つのもの」は「風」と「水」。なぜ、風の流れ、水の流れを読み取る必要があるのだろう。二人のエキスパートの働きを通して分かったのは、「連鎖」この世に動いているものは全部、関係のないようなものまでもつながっているということだ。水も風も、虫も。そして、わたし達人間も。無理に水をくみ上げたり流れに逆らったりすると、バランスが崩れて災害が起こる。人間が森林を切り開いていくと「連鎖」がこわれてしまうということを聞いたことがある。考えてみると当然なことだが、「つながっている」ということが、大きくて不思議なことだと感じる。エキスパートは、自然をあるがまま受け入れることによって、つながりを守っているのだと思う。

 マッチタワーコンクールで準グランプリをとったアーチの作品のタイトルは「風の架け橋」。「風のアーチスト」の誕生だ。賞をとれたのは、父さんから受けついだ「風のエキスパート」の資質のおかげだけでなく、支えてくれ仲間達がいたからだ。それから一年半後、国外に出ていたフウガさん達がこの町に帰ってくる。何とキサとトアが並んでタラップを降りてくるのだ。町中が大きなおどろきと喜びに包まれるだろう。

 きっと、キサとトアは、「つながり」という、この世で最も神秘的な何かを伝えるために生まれてきたに違いない。自然の「連鎖」、そして、人と人との「つながり」を。

 「良かったね、アーチ。三人で一緒に、遊んだりご飯を食べたりできるね。」



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