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受賞作品 感想文部門
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見えないものを信じる心
玉井 夕紀子
米子市立車尾小学校6年
「クロリスの庭」ポプラ社 |
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私は小学六年生にもなって、サンタクロースを信じています。それをクラスの友達に言うと、ほとんどの人達が、「サンタさんなんていない。お母さん達がプレゼントを置いているんだ。」と言って、けっこうバカにされます。でも、お父さんやお母さんは、「その友達は大人になっちゃったんだね。さみしいね。」と、私と同じ「サンタはいる派」に賛成してくれます。そして、毎年クリスマスになると、私と弟達といっしょになって、ドキドキ大さわぎしながらサンタさんが来るのを待っています。
「クロリス」という、何かよく分からない言葉にひかれて手にとったこの物語は、絶対「サンタはいる派」だけど、友達にバカにされてちょっとモヤモヤしていた私の心を、心地いい風できりを晴らすように、明るくしてくれました。ガラスのように透明で美しい「クロリスの庭」の世界。物語を読み進めていくと、私の大好きな魔女や妖精が出てきて、どんどん話の世界に引きこまれていきました。そして、私の頭の中にはずーっと、オルゴールのような優しい音色が流れていました。
主人公の西野風一さんは、人一倍ていねいな仕事をする人でした。それは、お客さんのことを第一に考える優しい心と、花を大切に思う美しい心の持ち主だったからだと思います。だれよりも一生けん命仕事をしているのに、周りの人たちには「のろい」というようなかげ口を言われていて、私は「どうしてちがう見方ができないんだろう」と、思いました。
風一さんのように、子どものころと変わらない、美しく純すいな心を持っている人は、大人の世界では認められにくいのでしょうか。周りの、成長して大人になってしまった人の心は、上手に仕事ができる人や、上手に人と関われる人など、表面的なことばかり見て、人を簡単に判断してしまうような気がします。私は、そんな人を見るとさみしいです。
けれど、「クロリスの庭」は、そんな風一さんだからこそ選ばれた場所でした。風一さんには、目には見えないけれど、確かに存在する世界を信じることができる心があったからです。「人間は、科学で証明できることや、目に見えるものしか信じようとしないけれど、この世には、科学で証明できないこと、そして、花のかおりのように、目にはみえないけれど、たしかに存在するものや場所というものがあるんだよ。」―私は、クロリスの庭のマスターが風一さんに言ったこの言葉を読んだとき、ドキッとして、とてもうれしくなりました。私のお母さんが、いつも言っていることと同じだったからです。
夢を見ることや、人を愛することや、優しさは、けっして目には見えません。けれど、私は、その存在を信じ、一番大切なものとして心に持ち続ける大人になりたいと思います。
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