受賞作品 感想文部門


  入選
「はるかな島」を読んで

田村 帆野佳
琴浦町立八橋小学校5年


「はるかな島」光村教育図書


 「はるかな島」とは、どんな島なのだろう。表紙の絵を見て、だれひとり悲しい思いなどしない楽しくて平和な島の話だと思い浮かべながら読んだので「相手かまわずどなり」という書き出しに驚き、不思議に感じた。

 ひとりきりになりたいとひたすら願う不幸な男は、他人とかかわることをいやがり「あっちへ行け!」「こっちへ来るな!」とののしり、ほら穴にかくれ住んだ。そんな男が、最後には、空を見上げ、心の底から笑っている。世にも幸福な男として。

 なぜ、男は、人を信用できず、遠ざけたのだろう。その疑問は、おしまいの説明で納得ができた。優しく、現地の人とも仲良くくらしていた男が、むごたらしい拷問を受け、人がこわくなり、ごつごつした岩肌の島のように暗い心になってしまったのだ。

 幸福って何だろう。

 「かつての不幸な男はどこかに消え、今空を見上げて笑っているのは、世にも幸福な男だった。」という文を読んだ時、心の底から空を見上げて笑えた男の心に、男がもとから持っていた心の美しさ、やさしさがよみがえったのではないかと思った。男は、本来の男の姿にもどったのではないだろうか。

 島へ来た人たちの「ひょっとすると人が住んでいるかもしれない。」という思いやりの気持ちや、男の本当の心を見抜き緑があふれる島になるまでいっしょに働いたむすめのかかわりによって、岩肌むきだしのさびしい島が緑豊かなすばらしい島になった。それと同時に「男の心」の豊かさもあふれでた。そして、男は、今までで一番の幸福を見つけたのだと思う。

 私も友達とうまくいかず、ひとりぼっちの気持ちを経験した時、心はあれはてた島のようだった。私の心に力をくれたのは、家族の愛情だった。暗い気持ちで、友達とどのようにかかわったらよいか分からなくなってしまったとき、お母さんが、私の心の支え、立ち直る力を与えてくれた。自分は必要とされているんだと感じた時、私の冷たくなった心にも、芽が出て花が咲きだした気がする。

 この男も同じなんだと思った。男の場合も、むすめや島へ来た人たちの愛情が積み重なって、本来の美しい心をよみがえらせ、美しい「はるかな島」になったにちがいない。「はるかな島」は、地球上のどこからもはるかに遠い島だけど、人々の様々な愛情にあふれたすばらしい島になったのだ。

 「世にも幸福な男」になった男と同じように、私も幸福だと思う。なぜなら、私は、家族にたくさんの愛情を注いてもらっていることがよく分かったから。人の幸福には、周りの人の愛情が必要なのだ。人は、周りの人とのかかわりによって、幸福にも不幸にもなるのだと分かった。私は、この幸福を人にも分けてあげたい。私も、人に愛情をそそぐことのできるすばらしい人になりたい。家族を愛し、周りの人を愛することができる人に。

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主   催 鳥取県学校図書館協議会、新日本海新聞社
特別協賛 鳥取支社
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