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受賞作品 感想文部門
「クラウディアの祈り」を読んで
坂本 梨紗
琴浦町立八橋小学校6年
「クラウディアの祈り」ポプラ社 |
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「クラウディアの祈り」との最初の出会いは、絵本だった。私は、思いやりをもち、忍耐強く勇敢なクラウディアのことがずっと心に残っていた。作者の村尾靖子さんが新たに同じ題名の本を出されたことを知ると、すぐに図書館で、この本を探した。表紙のクラウディアの写真は、強そうに見えて、どこかさびしげな表情に思えた。クラウディアは、一体どのような人生を送ってきたのだろう。
クラウディア、彌三郎、久子、三人とも、戦争のために、当たり前の幸せをうばわれた。無実の罪、愛する家族との離別、死ととなり合わせの生活。屈辱的な思い、悲痛な叫びが痛いほど私の心に伝わってきた。
私は、戦時中の話を、よく祖母から聞く。今では想像できないようなくらしだったこと、ひいおじいちゃんは銃撃戦で多くの戦友を失ったこと、戦争は、家族を引き裂き、命をうばう悲惨なものであることを。
生死の境目のような状態の中で、彌三郎は生き延びた。「私は人間だ。人間であることを決して忘れてはいけない。」と自分に言い聞かせながら。過酷な労働に耐え抜き生きようとする、決してあきらめない彌三郎の姿に、人間としての誇りと強さを感じた。
彌三郎の強さの奥底には、久子、娘、母を思う気持ちがあったと思う。夜、目を閉じると久子や娘の姿がまぶたに浮かび、何度も心の中で手紙を書いた彌三郎。祖国をしのび、日本の家族との再会を祈り続けたに違いない。
クラウディアと彌三郎の出会いはまさに運命の出会いだ。クラウディアの存在が彌三郎の心を生き返らせ、勇気を与えたように、クラウディアにとっても、彌三郎はかけがえのない存在だ。彌三郎が日本に帰るとき「他人の悲しみの上に自分の幸福を築いてはいけない」という信念のもと、心の底から彌三郎の幸せを喜ぼうとしたクラウディア。幼いころ両親を亡くし、一人で必死に生きてきたクラウディアにとって、彌三郎は長い間あこがれていた家族そのものだったのに。
久子もまた、強く、思いやりの深い女性だ。五十一年間もの長い年月、夫の帰還を待ち続け、夫を支えたクラウディアに対して感謝と敬意を表している。帰るあてのない彌三郎が、妻と娘、二人の幸福を願い久子の再婚を願ったように、お互いの幸せを何より望んでいる。
愛すればこそ、相手の幸せを願う三人の姿から家族に対する愛について考えさせられた。家族への愛が心の支えになること、自分のことよりも相手の幸せを願うことのできるのが愛情であること。
私の祖父も献身的に介護をしてくれる祖母のことを思い、つらいリハビリに耐え、二人で困難を乗り越えている。二人の姿に相手を思いやる愛情をうかがうことができる。
私の大切な家族。いつも応援し見守ってくれる家族に感謝し、皆が幸福な人生を送ることができるよう、お互いに支え合って生きていきたい。 |
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