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武二はすごいなあ。古ギツネが人間の和尚に化けていることも、大フクロウが学校の山野先生に化けていることもだれにもわからなかったのに、ひと目見ただけでその正体を見やぶってしまうなんて。もしぼくだったら、正体を見やぶられるだろうか。少し心配だけど、ぼくにも出来そうな気がする。なぜかというと、ぼくも武二のように化けじゅつの名人をたくさん知っているからだ。ぼくは、家の庭で緑色のアオムシがチョウに化けたり、うらの田んぼでヤゴがトンボになったり、オタマジャクシがカエルになったりするのをいっぱい見ている。ぼくも武二みたいにキツネ和尚と友だちになれそうだ。キツネ和尚と武二とぼくの三人で雲に乗っかって空を飛べたら、最高に楽しいだろうな。 武二たちが乗った雲が村の真ん中まで来た時、黒雲が村の上空におしよせてきた。ぼくは、フクロウは夜行性だから、たぶん黒雲の中に大フクロウがかくれてやって来たと思った。そして、空をおおって村を夜みたいに暗くしてしまったんだと思う。 最しょぼくは、大フクロウの山野先生はいやな先生だと思った。鳥のことばかりの授業で困るし、ぼくの大すきな算数の問題も計算出来ない問題を出すからだ。でも、この本を何回も読むうちに少し考えが変わってきた。大フクロウの気持ちが少し分かってきた。大フクロウは、人間の先生になって鳥の事を伝えたかったんだと思う。 ぼくは、山野先生が映した「鳥たちのくらし」という映画が気に入った。「スズメたちの朝」は、スズメの言葉が人間の言葉に訳されて映る。まるで、ぼくのお母さんが近所で話しているみたいだ。「お母さん鳥と子どもたち」という映画は、シジュウカラの一家の事がよく分かった。鳥の兄弟も人間と同じで、一羽ずつ性格がちがっているんだ。ぼくは、鳥にも家族があるんだなと思った。 ぼくは去年の夏、公園の草かりを町内の人といっしょにした。その時、公園の木のまわりをピーピー鳴く親鳥がいた。巣が近くにあったのに気がつかず草かりをしたので、こ鳥が一羽巣から落ちて死んでしまった。あの時、山野先生みたいに鳥語を知っていたら、「大じょうぶかい」と声をかけてあげたのに。 大フクロウは、人間と仲良くしたかったんだと思う。人間の先生になって、鳥や自然のことを人間に教えたかったんだろう。ぼくは、武二たちも山野先生のそんな気持ちが分かってきたと思う。だから、大フクロウのすがたが消えるまで、だれも目をはなそうとしなかったんだ。 ぼくは、今まで鳥の事を考えたことがない。でもこの本を読んで、鳥も人間も動物も、みんな同じ地球で生きているから、みんなでたすけ合ったり仲良くしないといけないと思う。今度鳥と出あったら、鳥語を話してみたいと思う。そうして仲良くしていきたい。 << 「受賞者のみなさん」一覧へ |
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