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vol.124山を守る 温暖化防ぐ取り組み
2019.1.30
数多くの災害に見舞われた昨年。今や常態化しつつある「極端気象」には、地球温暖化の影響が関係していると考えられている。今回は、地球温暖化防止活動の一つとして山の森林保全に注目し、智頭町芦津地区のシイタケ栽培の取り組みと、鳥取北ロータリークラブの里山整備事業を紹介する。
鳥取北RC 植林通し育む、環境保全の心
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県東部森林組合の指導の下、竹林だった裏山にクヌギの苗を植林する児童ら=昨年11月、国府町宮下 |
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自分の名前を書いた竹製の名札を、植林したクヌギの横に打ち込む児童 |
■竹林伐採しクヌギ植林
鳥取北ロータリークラブ(森本美明会長、46人)は、2017年度から里山整備事業の一環として、鳥取市内の小学校と連携して植林活動を行っている。
活動2年目となる昨年は、鳥取市国府町宮下の宮ノ下小裏山の竹林約600平方メートルを伐採した斜面にクヌギの苗180本を植林。同校の4年生児童54人と教員、地主も参加し、11月に作業した。
■放置竹林の影響
「仕事を通じて、放置竹林が森林の荒廃を招くことをまざまざと思い知った」と、同クラブ幹事の田中和夫さん(53)は危機感を抱く。強い繁殖力でみるみる拡大していく竹林を放置していると、太陽光を遮って山の生態系を狂わせ、結果的に地球温暖化を進めてしまうことになるとして、適切な整備が必要と感じていた。前任の幹事が県東部森林組合(嶋沢和幸代表理事組合長)と縁があったことがきっかけで、同組合協力の下、ロータリー財団の補助金を使って取り組むことになった。
子どもたちの意識醸成
同事業のもう一つの目的は、未来を担う子どもたちの心に環境保全の心を宿すこと。苗の横には、児童それぞれの名前を書いた竹製の名札が添えられ、成長の早いクヌギは子どもたちが大人になるころには立派に育ち、再び出会えることを望んでいる。
森本会長(68)は「これからも鳥取北ロータリークラブの一つの事業として育てていきたい」と、今後も事業を継続していく意思を示した。
智頭・芦津地区 原木シイタケ栽培に着手
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シイタケ栽培のほだ場に適している芦津地区の山林。よろい伏せで組まれたほだ木を管理する同地区シイタケ栽培の中心メンバー |
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新しいハウスの中で、袋かけして順調に成長するシイタケを見守る芦津地区の人たち |
■地域自律型循環維持モデル
智頭町芦津地区(武田彰弘区長)は、同町の協力を受けて一昨年から原木シイタケの栽培に着手しており、「地域自律型循環維持モデル」として、収益を地域の住民福祉の向上に役立てている。
今季は栽培用のビニールハウス3棟と、干ししいたけの乾燥機2台を設置する作業棟1棟を新設し、増産体制を整えた。
ハウス内で行うシイタケの収穫や選別、袋詰めなどの作業は、独居高齢者の社会参加の場にもなっており、高齢化が進む地域であらゆる世代の力を活用してやりがいを創出する、全国でも先進的な取り組みとして注目されている。
■付加価値高いブランドの栽培
同地区が栽培するシイタケは、種菌に「菌興115号」を用いたブランドシイタケ「とっとり115」。ほだ木は、主に地区の財産区有林に自生しているミズナラを使用する。1〜3月にかけて、長さ1メートルに伐採した直径10センチほどのほだ木に40個ほど穴を開け、そこに形成菌を打ち込んで植菌。高地のほだ場で伏せ込みした後、11月にハウス栽培に切り替え、12月下旬から芽切り(発生)したシイタケを出荷していく。昨季はトップブランド「鳥取茸王(たけおう)」も数多く“輩出”した。
同地区シイタケ生産責任者の寺谷謙二さん(62)は「今季は3600本の原木で大幅な出荷量増を見込んでいる」と意気込む。
■自然共生社会に欠かせぬ広葉樹林
智頭町は、町の総面積の9割以上が山林で、長い植樹の歴史で育まれた「智頭杉」が用材などの利用で高い評価を得ている。一方、雑木林が少ない。
同地区のシイタケ栽培をけん引する一人、芦津財産区議会議長の綾木章太郎さん(67)は「山には生物多様性の保全や災害の未然防止などの観点で、広葉樹林も必要」と訴える。
今後は、同財産区が保有する山の一部を皆伐してミズナラを植え、少しずつ広葉樹を増やしていく考えだ。
気候変動時代を生きる
気象災害により再エネ重視
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西日本豪雨で千代川が増水し、崩落した国道373号=昨年7月、智頭町福原 |
昨年、国連国際防災戦略事務局は、過去20年間の気候災害による経済的損失が2・2倍になったと報告しました。背景に「極端気象」の激増があり、次世代のためにも温室効果ガスの排出をこれ以上見過ごす訳にはいかないことが明白となりました。
そんな中、世界各地で再生可能エネルギー(以下、再エネ)電力を利用する取り組みが活発になっています。日本国内でも固定価格買取制度(FIT)と電気小売自由化を機に、再エネが急速に普及しました。
欧米の機関投資家は投資対象の選定に、再エネを重視しています。また、環境・社会・企業統治を重視する「ESG投資」の流れが世界各地で加速し、先進的な企業はサプライチェーン全体で100%再エネを求めています。
昨年末の日本生命による新設石炭火力発電への融資停止なども、この世界的潮流に加え、前述の気象災害による経済的損失の急増が理由と考えられます。
日本では、再エネは火力発電など従来型発電と比べ、コストも相対的に高いにもかかわらず、果敢に再エネ事業に取り組む団体や、エネルギー自立を目指し再エネ重視で街づくりをする地域も出始めています。
鳥取県内の電力調達の状況は、いまだにコスト重視の中小企業や自治体もある一方で、庁舎の低炭素化を目指す境港市は、地域性プラスCO2削減を基準に取り組み、市民に率先行動を示しました。
このように、電力調達はコストではなく、地域や将来へ向けた投資であり、気象災害による経済的損失を減らす選択肢として事業に取り入れられるべきです。
(鳥取県地球温暖化防止活動推進センター・山本ルリコ)
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