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vol.178 脱炭素経営に導く
2024.4.30
太陽光発電などクリーンな再生可能エネルギー(再エネ)の活用が、脱炭素社会実現の鍵を握っている。再エネ電力に切り替えたり、自家発電した電気を自社で消費したりする企業も増加。企業の再エネ活用のメリットは、コストの削減にとどまらず、災害時の電源確保なども視野に入る。地球温暖化対策への貢献を社会にアピールできることも大きい。脱炭素経営を目指す企業のブランド戦略は、再エネ拡大の推進力となりそうだ。
再エネ拡大の推進力に
鳥取県内企業を脱炭素経営に導く第一歩として、鳥取県は2023年度から、省エネ診断できる人材の育成に取り組んでいる。講座修了者を診断員として登録。企業にトライアル派遣し、無料診断事業を展開している。
診断員は、省エネの取り組みを評価した上で、運用改善や今後の設備投資を提案するなど、企業の省エネ意識を高める入り口の役割を担う。
トライアル派遣のマッチングなど、県地球温暖化防止活動推進センター(ゼロカーボンとっとり)と連携して進めており、事業初年度の23年度は18人の診断員が登録し、10社のトライアル診断を行った。
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店舗の屋根に太陽光パネル72枚を設置した「びんごやスーパーショップ鳥取店」 |
このうち、鳥取市賀露町のセレクトショップ「びんごやスーパーショップ鳥取店」は昨年秋にトライアル診断を受けた。4、5年前に店内全てのエアコンを省エネ型に取り替え、照明をLED化するなど消費電力の7割を占めていた空調と照明を更新しており、次のステップに向け、診断員の助言を得た。今年1月には鳥取市の補助金交付を利用して、自家消費型の太陽光発電設備と蓄電池を導入。再エネの活用に着手した。
木村尚宏店長(43)は、夏にピークを迎える同店の電力のコストダウンを期待しながら、「災害などの停電でレジが使えなくなる心配もなくなることは、太陽光と蓄電池を導入する大きなメリット」と強調。「自分たちの省エネの取り組みができているかできていないか、数字で確認できるいい機会だった」と振り返った。
「再エネ、省エネを推進するため、ゼロカーボンとっとりと連携して、補助金や融資制度の情報も提供できる専門家の派遣体制を県内で構築したい」と考える県脱炭素社会推進課の担当者は「金融機関との意見交換を通じ、企業を脱炭素経営に導く施策について、金融機関とも連携を強めたい」と語る。
県内26社が参加
2050年までに使用電力を100%再エネに転換することを目指す中小企業の枠組み「再エネ100宣言 RE(アールイー)Action(アクション)」。鳥取県内からは4月22日現在、都道府県別で3番目に多い26社(全国360社)が参加しており、23年4月以降に7社増えた。
この枠組みを応援するアンバサダーに就任している鳥取県は、県内参加企業の再エネ活用を促すため、省エネ、再エネ設備、商用電気自動車などの導入経費を支援している。
未来へつなぐ私のチャレンジ 公立鳥取環境大学通信
(2)気候変動対策をエネルギーの視点から考える
暮らしが豊かになる方法
環境学部環境学科4年 三谷 菜摘
私は気候変動問題に関心がある。関心を持つきっかけになったのは、中学生時代に授業の一環として鑑賞した1本の洋画だ。
作中には、気候変動が深刻化した世界で次々に異常気象が起こる鮮烈な描写があった。それを見て、中学生ながらに「世界は現状のままではいけない」「何か自分にできることはないか」と考え始めるようになった。そして、公立鳥取環境大学に進学し、気候変動対策のアプローチの一つとして“エネルギー”について、日々学びを深めている。また卒業研究では「自立分散型エネルギーによるまちづくり」をテーマにする予定だ。
内容は、地域で生まれた木材や食品残渣(ざんさ)、下水汚泥を活用したバイオマス発電、住宅や公共施設に設置したパネルで太陽光発電を行い、エネルギーの地産地消を行うことで利益の循環を起こして地域活性化につなげるというものだ。
この考え方は、エネルギー自給率が低く、災害の多い日本だからこそ、これからの持続可能な社会形成において重要だと考えている。この取り組みは温暖化防止に貢献するとともに、地域の人々にも豊かで安全な生活を提供するものである。
気候変動問題を継続的に取り組むに当たって、制限を多く強いる方法ではなく、“人々の生活がより良くなる方法の掛け合わせ”という視点が重要なのではないだろうか。
わが社の環境(エコ)活動
株式会社エナテクス
(倉吉市清谷町2丁目、福井利明社長)
地産地消のエネルギー普及へ
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グループ会社が運営する北栄高千穂太陽光発電所 |
「農作物と同じようにエネルギーも地産地消が可能」と考え、「100%地産地消の再生可能エネルギー」の普及を目指すことで脱炭素社会実現に挑む。
地域のエネルギーである太陽光、風力、水力などから作られた電気は「ゼロカーボン」で、為替レートや社会情勢など外的な要因に左右されない安全・安心で安定したエネルギーであるだけでなく「地域内経済循環にもつながる」と確信している。
同社を含めた民間企業のほか、倉吉市・北栄町・琴浦町が出資する地域電力会社「株式会社鳥取みらい電力」が供給する電気は、全て二酸化炭素排出係数ゼロの「実質再エネ」で、同市町の公共施設に販売している。将来的には県中部全域の公共施設をはじめ、民間事業者や一般家庭にも供給先を広げ、地域のゼロカーボン化を後押しする。
有限会社大成商事
(米子市夜見町、佐田山一成社長)
利用しやすい資源回収施設
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タイセイくんの古紙ランド花園店(米子市) |
家庭や事業所から出る新聞や雑誌、段ボールなどの古紙類を回収する「タイセイくんの古紙ランド」を運営する。
地域住民の利便性確保を第一に、無人化運営で24時間年中無休いつでも利用できる体制を整えた。持ち込んだ古紙類の重さに応じてポイントが付与(午前7時〜午後8時)され、500ポイントためると500円のクオカードと交換。楽しみながら環境活動に参加できる。
2016年の境港店を皮切りに、現在は鳥取県西部で6店、島根県で2店(松江市東出雲町、安来市)を運営。ポイント対象外だが、西福原、境港、東出雲の3店では古着の持ち込みも受け付ける。佐田山社長は「世界一きれいな資源回収施設を目指したい」と意気込む。
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