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vol.137 環境守る森林、林業
2020.6.29
近年、気候変動による自然災害は激しさと頻度を増しており、今年も梅雨に入り集中豪雨や土砂災害などへの警戒が高まる。気候変動を引き起こす原因とされるのは、二酸化炭素(CO2)など温室効果ガスの排出量増加による地球温暖化だ。日本の国土面積の7割弱を占める森林には、大気成分の調整や水源涵養(かんよう)などの多面的機能があり、地球温暖化と相関関係が指摘されている。環境を守るため森林と林業の果たす役割について考える。
鳥取県林業試験場・矢部浩森林管理研究室主任研究員に聞く
間伐で災害防止、土壌保全 若者就業増、定着に期待
森林の多面的機能を支え、健全で持続可能な森林づくりに貢献する林業界。最近、若い世代の就業が増えているなど、新たな潮流が生まれている。鳥取県林業試験場の矢部浩森林管理研究室主任研究員に話を聞いた。
災害が起こりやすい国土
日本の国土は地形や気候条件から、土砂災害などの山地災害が発生しやすい。特に戦後までは、計画性のない伐採が行われるなど、森林保全対策が不十分だった。山は再三荒廃し、大規模な自然災害に見舞われ、風水害一件当たり千、万の単位で多数の犠牲者が出ていた。近年は、治山治水対策や砂防堰堤(えんてい)の設置などで犠牲者は減ったが、地球温暖化が原因と見られる気象災害の激甚化など新たな問題も発生している。
森林管理の重要性
山は財産であり、災害を最小限に抑えるといった二つの価値がある。そのため森林を管理しないといけない。放置すればお互いの木が干渉して満足に成長せず、細い木が林立し、風や雨で木が折れて根っこからひっくり返る。そのため、土砂災害防止、土壌保全のために間伐を行う。間伐は木がCO2の吸収率を高め、炭素を体内に固定する効果があるため、地球環境保全にも貢献する。
新たな林業スタイル
県内の林業従事者数の推移をみると、1980年代が1800人、現在は600人とピーク時の3分の1だが、2005年に鳥取県が「森林環境保全税」を導入したころを底に、回復傾向にある。県外都市部からのUTターン移住者で、自伐型林業に魅力を感じて従事することを希望する若い人たちが増えている。SNSを駆使した販路開拓など、新たな林業事業モデルに夢が広がる。
戦後林政の一大転換期
昨年4月から、国の「森林経営管理制度」と「森林環境譲与税」が始まった。さらに24年には「森林環境税」が創設される。この数年で、林政は戦後始まって以来の一大転換期を迎える。林業にさらに注目が集まり、新規事業参入や担い手定着などにつながることを願っている。
源流の役割、責任胸に 智頭ノ森ノ学ビ舎
町有林整備、若い人材育成
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シェアオフィスで談笑する20〜30代の若い林家たち。左が国岡さん |
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林業を担う若い世代に専門技術を伝える現場研修 |
「智頭ノ森ノ学ビ舎」(大谷訓大会長)は、林業人材の育成機関として2015年9月に智頭町で発足した。「人を活(い)かす山を創る」を活動理念に、これまで山が担ってきた「源流の役割を守り、下流に水を送り出す」ことで、まちや村に住む人々の生活を豊かにすることを目指す。
同団体の活動のメインとなる森林施業は、同町から研修フィールドとして貸与されている町有林57ヘクタールの整備が中心。作業道敷設、間伐、伐倒、造材、搬出作業などを行っている。17年には法人格のMANABIYA(まなびや)を設立し、事業主体とすることで、金融機関からの融資を受けて山林整備用の機械を導入し、作業効率化を図ってきた。
一方、人材育成面では林業塾を開催し、中・上級者向けのスキルアップや会員の指導力強化の研修を行うとともに、ワイヤー編みや枝打ち、安全講習などのワークショップを開催。知見を得るため、外部から講師を招き、座学やサロンも積極的に開き、林業経営に必要な知識・技術を習得する機会を提供している。
現在20、30代を中心に35人の会員がいる。持ち山や整備を委託された森林を自ら間伐などで施業し、林業経営を行う「自伐型林家」をはじめ、林業に興味を抱く一般の人までさまざま。県外からの移住者が半数以上を占める。
MANABIYAの代表社員で、智頭ノ森ノ学ビ舎の事務局を務める国岡将平さん(33)は14年3月に東京のICT関連企業を退職してふるさとの智頭町にUターン。すでに自伐型林家として活動していた大谷会長(38)らとともに、同団体の設立に尽力した。国岡さんは帰郷後参加した会合で、台風で川の水がにごり、下流で海産物が取れないという話を耳にし「千代川の源流である同町の山には、下流域で生活を営む人々へ豊かな水を送り出す責任がある」と林業の重要性を意識した。
町内にあるシェアオフィスは、会員同士のコミュニケーションを取る場となっている。国岡さんは「山の価値は多様性によって生まれる。まちの人など、いろいろな人に入ってほしい」と団体への参加を呼び掛ける。
気候危機 日本の常識 世界の非常識
プラ過剰使用を抑制
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マルクトの生鮮食品は裸ばら売りが基本 |
子育て中に生活していたドイツのマルクト(青空市場)で驚いたのは、野菜や果物が全て「裸」で並んでいることでした。ラップなしが新鮮な証し。肉も量り売り。卵も籠で買うのが当たり前で、歩いて通える範囲に必ず市場があった50年前の日本と同じ風景が日常でした。
日本では生鮮食品をはじめ、ほとんどがプラスチック容器で包装されています。輸送時や陳列時に傷まないよう、鮮度と衛生保持のため50年ほど前からプラ資材が大量に使用され始め、県外の大生産地の商品が流通するようになりました。それと前後して、身近な農地は放棄され、スーパーが大型化。コンビニが増え駅前がシャッター街となり、郊外の宅地造成が進むとともに里山に空き家が増えました。
来月1日から、プラスチック製レジ袋の有料化が始まります。対象となるのは、石油などの化石資源でできたプラスチック製の買い物袋で、目的は、廃棄物・資源制約や海洋ごみ問題、地球温暖化などの課題に対して、プラスチックの過剰使用を抑制し、ライフスタイルを見直してもらうためとされています。
しかし、レジ袋有料化とマイバッグ持参だけをゴールにすると、制度の真価を発揮できません。プラ容器をはじめ、化石資源と社会のつながり方を俯瞰(ふかん)する視点が不可欠です。近場の朝採れの恵みを享受できる地元の農畜産漁業や日常の道具を通じた鳥取ならではの手仕事や地場産業など、地域に根付いた自然豊かな鳥取らしい生活を再構築する社会的合意形成へのきっかけになればと考えます。
レジ袋もウミガメの鼻の穴に刺さったストローも、そしてコロナ禍のマスク不足もそれぞれ氷山の一角で、問題の根っこはつながっているのではないでしょうか。(鳥取県地球温暖化防止活動推進センター 山本ルリコ)
トップが語る環境問題
家計と環境にやさしい商品
株式会社光商会(鳥取市五反田町)
代表取締役社長 木村 憲司
光商会グループでは「安心・安全・快適で笑顔あふれるくらしづくりに貢献する」を経営理念に、省エネ環境商品の販売に取り組んでいます。循環型エネルギーの太陽光発電システム、省エネ型石油給湯器「エコフィール」、高機能断熱遮熱性ガラス「エコガラス」、高断熱性で高い省エネ効果を発揮する樹脂窓「エコ窓」、本年よりサービス開始した「ENEOSでんき」など、家計と環境にやさしい商品を提供しています。
創業100年を超えた企業として、常に挑戦・進化し続け、地域社会の発展に貢献してまいります。
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