環境保護に向けた「脱ガソリン車」の動きは世界各地で広がりつつある。走行時に二酸化炭素(CO2)を排出しない電気自動車(EV)をはじめとする環境対応車が普及・拡大し、脱炭素社会実現への推進力となることが期待されている。
鳥取大大学院工学研究科 桑野 将司教授に聞く
中山間地や過疎地域EVの共助交通化を スタンド維持、増設が課題
地球温暖化対策として、EVが注目される一方、充電スタンドの設置や航続距離の短さなど課題も山積する。EV普及の現状や課題、展望について鳥取大大学院工学研究科の桑野将司教授に聞いた。
−EVが温暖化防止に果たす役割は。
日本全体の温室効果ガスの20%弱が運輸部門から、そのうち90%弱が自家用車や貨物車から排出されている。走行時にCO2を排出しないEVに置き換えることは温暖化防止に貢献し、さらに充電する電力を火力から太陽光や風力など再生エネルギーに切り替えることで効果が大きくなる。
−EVの普及の現状、今後の普及の見通しは。
世界的にはかなり普及が進み、中国は販売台数が最も多く、EUや米国では新車に占めるEVの割合がかなり高くなってきた。世界全体で見ても販売に占めるEV割合は10%を超えた。対して、日本の普及率はまだまだ低い。ただ昨年は日本でもEVの販売台数が過去最高となり、これから拡大が進むと見込んでいる。一方、貨物車や建設機械のEVの技術開発は進められているが、普及に至っていない。
−充電環境の現状と課題は。
日本全体では2010年代半ば頃に充電スタンドが爆発的に設置されたが、老朽化で更新せずに撤去され最近は減っている。スタンドの維持、増設が今後の普及の要因となる。充電時間の短縮を図るために、公道への充電器設置や走行中に充電できる技術の研究が国際的に進められている。走りながら充電できるようになり、ドライバーが遠回りでも充電できる道を選べば、渋滞や騒音問題の回避にもつながる。
集合住宅が多い都市部では自宅での充電設備の設置は難しいが、戸建てが多い地方では設置しやすい。人口減でガソリンスタンドがなくなった中山間地域や過疎地域の高齢者が日常の外出でEVを使うよう普及を促すのは有効な施策だ。
−EVの普及を環境ビジネスに生かす手だては。
レンタカーでのEV利用は一般的に難しい。観光レジャーやビジネスでの利用が多く、時間の有効利用や長距離ドライブが目的だからだ。カーシェアリングでのEV利用は十分考えられるが、自家用車が普及している鳥取県などではカーシェアリング自体が少ない。
−EV普及の課題は。
再生エネルギーとの組み合わせが大きな課題だ。過疎地域で再生エネルギーを活用して、EVで共助交通に取り組めば良いモデルとなる。住民の足を確保するため、EVを使いやすい地域をつくっていくことが必要だ。行政の支援も今後必要となる。
EVに関する新しい情報を知らない人も多く、購入の選択肢から外されている。短い航続距離が問題となるが、通勤通学など日常的な利用には十分である。自身の車の利用実態を適切に診断して、EVへの乗り換えを考えることを意識すべきだ。
地域を支える環境(エコ)活動
日産プリンス鳥取販売株式会社
(鳥取市千代水4丁目 櫻井誠己社長)
地域にEVの可能性をPR
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地域のイベントに積極的に参加し、EVの給電機能をPR |
電気自動車(EV)は、環境に優しいだけでなく、災害時の非常用電源などとしても活用される。軽EVサクラの登場で普及への弾みが付く中、先駆者として地域にEVの多様な可能性を伝える活動に力を注ぐ。
地域とのつながりを重視し、日産の電動化アクション「ブルー・スイッチ」の一環で、米子・境港両市と脱炭素化と防災力強化に向けた連携協定を締結。イベントにも積極的に参加し、7月の米子駅南北自由通路開通イベントではEV2台が電気の供給で活躍した。
中津尾直己専務は「EVは単なる移動手段ではなく、防災など多用途に活用できる。車を通して未来への夢や希望を感じてもらいたい」と力を込める。
鳥取市環境事業公社
(鳥取市秋里 星見喜昭理事長)
食品廃棄物を有機質肥料に
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市民に無料貸与している土姫農園 |
廃棄物の収集運搬・再資源化をはじめ、し尿収集運搬、地域水道施設管理、下水処理施設包括管理、浄化槽点検・清掃などの業務を通じて、地域の生活環境保全の役割を担う。良好な地球環境を次世代に継承するため、職員が一丸となって日々の事業活動に取り組む。
近年は、食品廃棄物や良質な汚泥などを原料に製造した、環境に優しい有機質肥料「土姫(つちひめ)」を製造・販売し、食品廃棄物などのリサイクル化に努める。また、この土姫を主要肥料に使用するコミュニティー農園「土姫農園」31区画を開設。市民に無償で貸し出す取り組みを通して、リサイクル肥料の有効性を深める機会を提供し、環境に優しい「循環型社会」の構築やSDGsへの地域貢献を目指す。
鳥取県生活協同組合
(鳥取市河原町布袋 井上約理事長)
自然エネルギーを積極導入
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同組合が導入を進めている太陽光パネル |
自治体や組合員などと連携して、省エネやリサイクルなどの環境保全活動を展開している。
自然エネルギーの導入を積極的に進めており、太陽光パネルを本部と東部支所に加えて、中・西部両支所に本年度設置する予定。事業活動で排出される温室効果ガスを、2030年度に13年度比で46%削減を目指す。
食品ロス削減にも力を注ぐ。家庭や事業所で余った食品を集めて必要な人へ届ける「フードドライブ」を実施している。また、牛乳パックや共同購入のカタログの回収リサイクル運動を促進。環境に配慮した商品「エシカル消費」の利用普及を図るなど、組合員が日常生活で自然と取り入れられる仕組みを整えている。
わたしたちのちょっとエコアクション ながらエコ、ついでエコ
暮らしの中でエコにつながる行動はさまざま。「何かをしながら」「何かのついでに」できると気負うことなく続きそうだ。肩肘張らず、手軽に取り組む県民エコ活動を紹介する。
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地球に優しい商品に出合えるイベントPR
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Q あなたのエコ活動は?
能見 和代さん(三朝町)
ブティックオサキ取締役
A マルシェを通じて体と地球に優しい商品を紹介
子どもが生まれたのを機にできるだけ体や地球に優しく安全なものに触れたいと考え、買い物時に食料品や日用品などを厳選しています。多くの人にも知ってほしいと思い、3年前から「ナチュラルandオーガニックマルシェ」を主宰。現在は3、6、9、12月の第4日曜日に開催しています。遠方からの出店もあり、作り手の顔も見えるとあってリピーターも年々増加。このマルシェが地球に優しいものに出合える場になってほしいと願っています。