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vol.138 目指すべき未来 Society5.0の社会実現に向けて
2020.8.29
最先端技術とデータを最大限活用することで、新たに見いだされた価値が産業や社会に変革をもたらしている。国が提唱する未来像「Society(ソサエティー)5.0」は農業やエネルギー分野にも投影されつつある。環境問題をはじめとする社会的課題の解決と、経済発展の両立を目指す鳥取県内での取り組みの一部を紹介する。
Society 5.0とは
人工知能(AI)やIoT(モノのインターネット)、ロボット、ビッグデータなどの革新技術をあらゆる産業や社会に取り入れることで実現する、日本が目指すべき新たな未来社会の姿。政府が策定した「第5期科学技術基本計画」の中で提唱された。 |
環境負荷に配慮 スマート農業
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安全に配慮して行われた実演会で、自動操舵システムを使い、直進を維持しながら溝を掘るトラクター(今年5月、南部町福成) |
森林の多面的機能を支え、健全で持続可能な森林づくりに貢献する林業界。最近、若い世代の就業が増えているなど、新たな潮流が生まれている。鳥取県林業試験場の矢部浩森林管理研究室主任研究員に話を聞いた。
担い手の高齢化や後継者不足など課題を抱える農業。その打開策の一つが情報通信技術(ICT)などを活用した「スマート農業」だ。南部町内の福成農園(野口龍馬社長)で今年から実証事業が行われており、環境負荷に配慮した持続可能な農業としても期待される。
農林水産省のスマート農業技術の開発・実証プロジェクト事業を活用。県や企業などと協力し、白ネギや水稲などの栽培で農業のユニバーサルデザイン化と管理の見える化を目標に取り組んでいる。
関係者が参加した5月の実演会では、自動操舵(そうだ)システムを搭載したトラクターが、人工衛星からの高精度な測位情報を受信して白ネギ植え付け用の溝を等間隔で掘った。
8月上旬にかけては、人工衛星の撮影画像から水稲の葉の色を解析し、養分が低下した箇所へ、無人ヘリコプターやドローンを使用して肥料を散布した。土壌センサーのデータから、白ネギの病気の発生と土壌水分との関連もうかがえた。
収穫期には、センサー付きコンバインで食味や収量をほ場ごとにデータ化しながら刈り取りを行う。
野口社長は「作物の育つ環境を整えることが農業。農薬散布も必要な時期に必要な量にとどめたい。データの蓄積と採算面が課題だが、来年は本格的に取り組んでみたい」と話した。
電力の見える化でエネルギーの地産地消を促進
小中学校にシステム導入へ 電源トレーサビリティー
エネルギーの地産地消を進めようと、鳥取市は電源を見える化するシステム「電源トレーサビリティー」の活用と、市内の小中学校に100%再生可能エネルギー由来の電力供給を進める。未来を担う子どもたちの環境教育につなげ、地球に優しい電力の利用促進を図る。将来的には一般家庭にも広げ、地方発の新たなビジネスモデルを創出する。
市は昨年度、市内の全小中学校にエアコンを設置。電力使用量の増加を見越して、持続可能な電力への切り替えを提案する。子どもたちの環境を守りながら、地方が豊かになるエネルギーの利用を考えてもらう。
同システムは、地元IT企業「アクシス」が海外製システムを日本版へ改修。とっとり市民電力が導入し、市や鳥取大工学部、市民エネルギーとっとりと活用方法を検討してきた。とっとり市民電力が購入する太陽光発電やバイオマス発電所などで発電した電力に関する情報をブロックチェーンに記録。消費者は専用サイトで、電力使用状況と電源種別が確認できる。
今後数年で市内の小中学校が使う電力のほぼ全てを、100%再生可能エネルギー由来の電気へ切り替えることを目指す。本年度は4校でシステムを運用する予定。市経済・雇用戦略課の保木本淳さんは「当たり前に再生可能エネルギーを選ぶ価値観が育つとうれしい」と話す。
“アフターコロナ”の社会では、エネルギーなどの必需品を地域で自給することが市民生活を守ることになるといわれる。とっとり市民電力の大谷友洋さんは「子どもたちが、将来働くフィールドとして地元が選択肢の一つになれば」と期待する。。
気候危機 日本の常識 世界の非常識
健康的な経済社会回復
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歩行者と自転車優先の街づくり(独フライブルク市) |
コロナ禍でオンライン会議となった今年のG20(金融・世界経済に関する首脳会合)では、4千万人を超える医療専門家と350を超える医療組織が世界のリーダーたちにヘルシーリカバリー(より健康的な経済社会回復)を求める書簡を送りました。
そこには交通や化石暖房・火力発電などからの大気汚染、気温上昇が肺疾患や心臓病、脳卒中の発症リスクといったコロナ感染症を重症化させ医療システムに負担を掛けたことへの反省、パンデミックへの予防策、公衆衛生、脱炭素気候対策への適切な投資によって、苦痛がやわらげられた可能性などが記されました。また、各国政府に都市計画における歩行者、自転車、公共交通優先、化石燃料への補助金の大胆な改革を断行し、再エネにシフトすることで世界のGDPを100兆ドル押し上げる経済の処方箋が示されました。
さて、私たちの対策は人や地域の健康に貢献しているでしょうか? 地球の気温が上昇を続ければ、さらなる異常気象や未知の感染症が襲い、それらへの保険支払いの増加などで経済に打撃を与えることは既知。
徒歩や自転車通勤への手当支援、歩行者や自転車優先の街づくり、住宅地の集約、EVタクシーやバス、公共交通のキャッシュレス化、住宅や学校などの高断熱化、企業や学校のリモート化など、コロナ禍で減った収入を単に補助金で補うのではなく、社会の感染症や気候変動に対する免疫力を高める仕組みができているのかが問われています。治療よりも予防の方がはるかに効果的なのは医療だけではありません。
(鳥取県地球温暖化防止活動推進センター・山本ルリコ)
トップが語る環境問題
地域とのつながり
公益財団法人鳥取市環境事業公社(鳥取市秋里)
理事長 星見 喜昭
廃棄物収集運搬や下水処理場運転管理をはじめ、地域水道施設の維持管理、有価物の再資源化などが主な業務です。ごみ出しの困難な方には、ふれあい収集にうかがうなど、市民とともに生活環境の保全を目指しています。持続可能な社会の実現に関心が高まる中、さまざまな取り組みを展開し、社会に貢献していきたいと考えています。
新型コロナウイルスの感染拡大は予断を許さない状況が続いています。公社の業務はどのような状況でも休むことができないことから感染防止に努め、地域のライフライン企業としての役割を果たしていきます。
自然と共に働く
リバードコーポレーション株式会社(鳥取市賀露町)
代表取締役社長 川口 大輔
弊社は8月3日、新本社屋・新工場を賀露に新築移転しました。その際、本社オフィスに取り入れたのが、日本でもまだ例の少ない「バイオフィリックデザイン」です。オフィス内に自然を創(つく)りあげ、人と自然と同化するというコンセプトのデザインです。
米リサーチ会社によると、この環境下で幸福度15%、創造性15%、生産性6%それぞれ上昇するというデータが出ています。弊社は環境問題を考える上でも、まず自然と共に働き、環境の未来像を創造することを進めていきたいと考えています。
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