交通・物流など運輸部門からの二酸化炭素(CO2)排出量は、日本国内の排出量全体の約2割、鳥取県内では約3割を占める。近年は減少傾向にあるものの、カーボンニュートラルの実現に向け、CO2削減ペースを上げていく必要があり、電気自動車(EV)の普及、公共交通機関の利用促進、物流の効率化などさまざまな分野で、環境負荷の低減につながる国や自治体、企業の対策が進む。
荷物の再配達削減へ 置き配ボックスに購入補助
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日吉津村の補助金を活用して購入された宅置き配ボックス |
通販市場の拡大により宅配便の取扱量が増える中、玄関先などにボックスを置き、非対面で荷物を受け取る「置き配」の普及などで再配達の削減が急がれている。ドライバーの労力軽減だけでなく、荷物を1回で受け取ることで余計なCO2を排出しない一人一人の行動変容を促そうと、鳥取県は本年度、家庭用置き配ボックスの購入を支援する県内市町村への間接補助に乗り出した。
鳥取県では県全体のCO2排出量のうち、運輸部門の割合が全国と比較して高い傾向にあることなどを踏まえた取り組みの一環。置き配ボックスの購入に対する県の補助率は、市町村が実施する補助の2分の1(一家庭への県補助上限額5千円)。
県内19市町村のうち、本年度当初から購入補助を実施していたのは、日吉津村(補助率2分の1、上限1万5千円)だけで、同村民が仮に3万円の置き配ボックスを購入し申請すれば、村から1万円、県から5千円の補助がある。
日吉津村は昨年度、国の補助金を活用して、県内で初めて置き配ボックスの購入補助を実施。36件の活用があり、補助を継続した本年度は先着50件を受け付けている。昨夏に補助を活用し、置き配ボックスを購入した同村の女性(53)は「以前から欲しかったが、結果的に補助金が背中を押してくれた。他市町の知人にうらやましがられ、ご近所に勧めたりもした。脱炭素を目指す意味でも取り組みが広がれば」と話した。
他の市町でも補正で、米子市や三朝町、湯梨浜町、日野町、南部町、大山町が同様の予算を確保。県脱炭素社会推進課の担当者は「誰でもすぐに取り組める“一発受け取り”。身近なところから行動を変え、脱炭素に興味を持ってもらうことで県民運動にまで高めていけたら」と話した。
国交省によると、今年4月の宅配便再配達率は10・4%で、前年同月と比較して1ポイント減少した。2020年度の推計値で再配達のトラックから排出されるCO2は年間25・4万トンで、東京23区の面積約1・7倍と同規模の杉林が1年間に吸収するCO2量に匹敵する。
未来へつなぐ私のチャレンジ 公立鳥取環境大学通信
(7)鉄道の獣害減らすには 安定輸送妨げるシカの線路侵入
経営学部4年・交通研究同好会 竹村 和晃
私は部のメンバーと、環境と交通をテーマに話し合った。鉄道と環境であれば、その交わり方は多様である。定番の「鉄道は一度に沢山の人・モノを運ぶことができるため、他の輸送手段より二酸化炭素の排出を抑える環境に優しい交通手段である」という話が多く見られたが、ある環境学部の部員が獣害の観点からこのテーマに触れた。
「環境」と一口に言っても、その言葉の持つ意味は多岐にわたる。面白いと思ったため、ここではあえてマイナーともいえる鉄道の獣害について触れる。
鉄道の安定輸送を妨げる輸送障害の中でも、特に多いのがシカとの接触事故。彼らは削れたレールから鉄分を摂取するために線路に侵入してしまう。鳥取県でもシカによる獣害は問題視されている。農作物や森林の植生に害を与えたりしているケース、シカとの接触事故も身近なものとなっているのではないだろうか。
JR西日本は鉄分入りの箱を線路の外に設置してシカの侵入を防ぐ対策を講じている。JR東日本では岩手大学との共同研究によりシカが恐れるライオンの糞(ふん)を含んだ薬剤を線路周辺にまく対策などを行っていた。シカがライオンの糞を嫌がるのであれば、クマやイノシシの糞にも同様の成分が含まれるのではないか、研究しても面白いのでは、と部内でも話が弾んだ。
このような発想から、鉄道の安定輸送に少しでも貢献できれば面白いのではないだろうか。
わが社の環境(エコ)活動
中国電力株式会社鳥取支社
鳥取市新品治町/森田秀樹支社長
エネルギー学ぶ環境学習に力
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7月に江府町と連携し企画した環境学習。俣野川発電所で記念写真を撮る子どもたち |
未来を担う子どもたちに電気をはじめとするエネルギーについて理解を深めてもらおうと、自然の中で行う環境学習に力を入れる。
7月には江府町と連携し、奥大山と俣野川発電所を舞台としたイベントを実施。社員が講師となり、同発電所の上池がある岡山県新庄村と下池がある同町の児童に自然が育む水の重要性、地元で生み出される電気の仕組みを解説した。
同発電所は再生可能エネルギーの普及・拡大にも大きな役割を果たす西日本最大級の揚水式発電所。迫力ある内部を見学した児童は、そのスケールの大きさに歓声を上げ、興味津々の様子だった。
身近な資源活用をテーマにしたイベントや県内の小学校、公民館、女性団体などへの出前授業も展開。生活に必要不可欠なエネルギー、環境問題について考える取り組みを続けていく。
日産プリンス鳥取販売株式会社
鳥取市千代水4丁目/櫻井誠己社長
EVを活用した社会貢献活動
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EVに蓄えられた電気を外部に給電するデモの様子 |
“走る蓄電池”として災害時などさまざまな場面で活躍が期待される電気自動車(EV)。同社はEVの先駆者としてメーカーなどと米子、境港両市と連携協定を締結し、EVを活用した社会貢献活動に力を注ぐ。
地域のイベントに積極的にEVを派遣し、給電デモなどを実施。中津尾直己専務は「活用ノウハウを蓄積しておかなければ、いざというときに役に立てない」と意義を強調する。
次世代への環境教育も始めた。使用済みのペットボトルのふたから再生された手のひらサイズのEVモデルカーの走行実験など、楽しみながら学ぶ教育プログラムを展開。また、「エコ活動を地域に循環させたい」(同専務)と回収したペットボトルのふたの洗浄を米子市内の福祉作業所に依頼し、学校へ届ける活動も行っている。
北溟産業有限会社
倉吉市岡/中川優広社長
五島列島で大型ドローン漂着ごみ運搬
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漂着ごみを運ぶドローン |
海岸や海沿いの崖などからのごみを効率的かつ安全に運搬するため、大型ドローンを使った清掃活動が県外でも力を発揮した。長崎県内の廃棄物処理業者から海岸の漂着ごみのドローン空輸の依頼を受け、9月24〜27日の4日間、作業を行った。
五島列島最北端の佐世保市宇久島、対馬瀬灯台から望む東シナ海は息をのむ絶景。島周辺は入り組んだ海岸が続き、大量のプラスチックごみが打ち上げられていた。三浦海岸と野方海岸では、湾対岸まで海をまたぎ往復500メートルの距離を40回、600キロの漂着ごみを空輸した。
中川社長は「初めての県外からの依頼だったが、大変喜んでもらえた。五島で年度内に新たな現場依頼があり、協力したいと思っている」と話す。