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vol.140快適な暮らしを実現
2020.10.28
深刻な地球温暖化にストップをかけるためには、身近な暮らしに関係して排出される二酸化炭素(CO2)の削減も求められている。気密性や断熱性を高め、家庭での消費エネルギーを抑えながら快適に暮らせる省エネルギー(省エネ)住宅の普及が進む一方、冷暖房に自然エネルギーを使い、カーボンニュートラルを意識した生活に貢献できる薪(まき)ストーブも静かなブームだ。
とっとり健康省エネ住宅
性能基準を策定 満たす住宅を認定、助成も
省エネ化の推進とCO2削減には、住宅の性能アップも欠かせない。鳥取県は今年、県独自の「とっとり健康省エネ住宅性能基準」を策定。その愛称を「NE―ST(ネスト)」と定め、7月から基準を満たす住宅の認定と助成に乗り出した。
高断熱で気密性の高い住宅の普及を促進し、県民の健康寿命の延伸と地球温暖化の要因であるCO2削減を図るのが狙い。
基準では、断熱と気密性能を「最低限」「推奨」「最高」の3段階のレベルで設定。最低限をクリアすると、国の省エネ基準に比べ、冷暖房費を30%以上削減できる。推奨レベルでは、欧米並みの省エネ基準と同等か、それを超える住宅が実現できる。
県独自の省エネ基準を浸透させるため、鳥取の新しい住まいのスタンダード(Next―Standard)を意図するNE―STを愛称にロゴマークを設定。基準を満たす住宅の新築には最大50万円(県住まいる支援事業と合わせ最大150万円)の助成を行う。
県住まいまちづくり課によると、延べ3回の研修を経て、設計業者136社、施工業者115社が事業者として登録され、7月以降、推奨レベルを中心に15戸の新築が申請されている(9月末現在)。
省エネ住宅づくりを積極的に進めている「ホームズ」(倉吉市)の牧井健一社長(46)は「推奨レベルで新築を予定されている方がすでにある。県としての住宅性能の基準が明確になったことで、一般の方の関心も高くなった。省エネ住宅づくりの後押しになる」と話している。
県は2025年までに、年間に建てられる新築一戸建て住宅数の3割に当たる約500戸まで認定住宅を増やしたい考え。槙原章二・同課企画担当係長は「事業者の皆さんの反応もいい。とっとり健康省エネ住宅の普及に取り組んでいきたい」と期待を寄せている。
薪ストーブも活躍
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冬場は愛犬も一緒に薪ストーブの生活を楽しむ山根さん宅 |
薪(まき)ストーブのある“火のある暮らし”を満喫している獣医師の山根義久さん(77)。倉吉市関金町にある築100年以上の家では、薪ストーブが山根さん夫婦の冬場の暮らしを支えつつ、癒やしとしても活躍している。
家は日野町の元庄屋の家屋を約15年前に移築。子どものとき、いろりやかまどのある生活を経験し、木造の家を建てた際は必ず薪ストーブやいろりを置きたいと考え、実現させた。
薪ストーブは11月下旬ごろから4月下旬ごろまで活躍する。石油ストーブの併用はあるが、エアコンの使用はほぼない。設置する居間の天井は高いが、十分に暖かいという。「(石油ストーブと)ぬくもりが全然違う。体の芯からあたたまり、炎のゆらめきを見ていると心も落ち着く」と笑顔で話し、冬は薪ストーブの前は愛犬2匹のお気に入りの場所になる。
薪は、栽培する果樹の剪定(せんてい)枝などもあるが、里山の再生や竹林整備などに取り組む讃郷愛林協会の会員になり、薪ストーブ愛好家らでつくる薪割クラブの活動の薪も活用している。
長年、動物と関わってきた山根さんは「環境が汚染されると真っ先に影響を受けるのが野生鳥獣」と訴え、「化石燃料に頼らない生活が薪ストーブの導入につながり、薪となる木は育てることができるクリーンな再生可能エネルギーにもなる」と話す。植樹活動にも目を向け、山根さんが関わる倉吉市内にある動物保護施設の敷地に今年、クヌギの植樹も計画している。
「いい再エネ」「悪い再エネ」
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地域の再エネ事業を学ぶ小学生(2019年8月) |
日本人は自然界に宿る神秘性など、目には見えないものを感じる豊かな感性を持っていると言われますが、本当に大切なものが見えているのでしょうか。
固定価格買取制度(FIT)が2012年にスタートして以来、日本での再生可能エネルギー(再エネ)導入量は飛躍的に伸びました。と同時に、地元の合意を得ずに悪臭・騒音被害を引き起こしたり、地形を無視した無計画な森林伐採で設置後に土砂崩れを誘発する事例が各地で報告されています。
こうした問題がきっかけとなって、本来は温室効果ガス削減による地球温暖化対策やエネルギーの地産地消による地域の経済循環などを目指すため推進されている再エネ、FIT制度全般に対する不信感も芽生えています。問題の事案理由として、「狭い国土の7割が森林という島国だから、再エネは日本に合わない」と的外れな見解を示す人もいます。ここで必要なのは次の三つの視点です。
一つ目は、問題は地形ではなく、ほぼどこに何でも建てられる緩い規制しかないことを認識した地域や不動産への責任感。二つ目は、燃料調達が現地の環境破壊・人権問題を防止する規制がないFIT要件にサスティナブルな視点が必要であること。三つ目に、何よりも「再エネの便益は地域の出資からしか得られない」という産業としての地域エネルギーです。
この視点は、どれも同じに見える再エネを「いい再エネ」か「悪い再エネ」か、見分ける眼鏡にもなります。地方創生の発祥地ともいえる鳥取県の資源は豊かな自然環境のはずです。そこから生まれる最大の便益が、再エネです。いい再エネか悪い再エネか、見極めた先にある持続可能な未来が私たちには見えているでしょうか。
(鳥取県地球温暖化防止活動推進センター・山本ルリコ)
トップが語る環境問題
一人一人が省エネを意識
株式会社ホームズ(倉吉市八屋)
代表取締役 牧井 健一
私たちが携わる家づくりは、家の環境一つで住む人の健康だけでなく、自然環境、エネルギー、教育、家族の人生にも大きな影響を与えています。家の高断熱化はエネルギーの省エネ化、再エネ化を促進し、また温熱環境コントロールの重要な要素となります。住む人一人一人が省エネを意識すれば、大きなエネルギーになります。我々は地元の地域に根付き、施主さまの間近にいる工務店です。気候変動の大きい環境の中でも長寿命で快適に健康で暮らせて、各地域が活性化して社会貢献できるような住宅を提供していきます。
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