太陽光発電システムなどを導入した住宅の断熱性、気密性が向上すれば、化石燃料由来の電気の消費量を抑えることができる。高い気密性と断熱性能を備えた新築住宅の取得、また、既存住宅の省エネルギー改修などは、家族の健康を担保する快適な住まいの礎にもなる。
鳥取大農学部生命環境農学科 田川公太朗准教授に聞く
脱炭素社会へ推進 全国に先駆けた認定基準
太陽エネルギーの活用などで住まいをエコにする取り組みについて、自然エネルギー工学が専門の鳥取大農学部生命環境農学科の田川公太朗准教授に聞いた。
−環境に優しい住まいとは。これからの住宅に求められる性能は。
住まいは単に建築物の家だけでなく、家族の暮らしも含まれる。環境に優しい住まいでは、住宅を建設するときだけでなく、そこで暮らしていく中でもエネルギーや資源を無駄なく適切に使い、環境への負荷を最小限にしようとする視点が重要となる。そのことが身近な自然環境、あるいは地球環境を守っていくことにもつながる。これからの住宅には高い省エネルギー性能が求められている。優れた性能を確保するために住宅の壁や窓などの高断熱化・高気密化が進められており、それらに応じた住宅建材や工法の開発などが重要となる。
−住宅用太陽光発電などは脱炭素社会にどう貢献するか。
日本では2030年度に温室効果ガス排出量を46%削減(13年度比)し、50年にカーボンニュートラルの実現を目指している。この目標に向けて、30年度までに電源構成に占める太陽光発電の割合を14〜16%へ増大させる計画であり、住宅用太陽光発電の導入拡大は大きな役割を果たす。近年、太陽光パネルの価格も下がっており、省エネ住宅に関する助成制度を利用して導入できる場合もある。30年や50年といった長期のスパンで太陽光発電を住宅に導入していくことは、脱炭素社会を実現する足がかりとなる。
さらに昨今のエネルギー高騰への対応として、太陽光発電で家庭での電力を自給するのは一つの方法だ。太陽光発電を中心に蓄電池や電気自動車などと組み合わせることで、住宅での創エネルギー技術の普及が進んでいくことにも期待したい。
−鳥取県が推奨しているとっとり健康省エネ住宅「NE−ST(ネスト)」「Re NE−ST(リネスト)」への期待は。
全国に先駆けて、県独自で住宅に対する高い省エネ住宅基準を検討し、新築住宅の基準を20年に、改修住宅の基準を22年に策定した。全国平均より高い性能基準で欧米並みに設定されている。その基準を用いて認定された住宅は助成を得られる。太陽光発電の設置や県産材の使用などの要件を取り入れたり、工務店や設計事務所の登録や研修制度を設定したりするなど、多くの関係者が連携する取り組みであることから、県内における省エネ住宅への関心が高まることに期待したい。
−地球環境とこれからの家づくりについて思いを。
エネルギーは私たちの生活の質や豊かさの土台である。脱炭素社会に向けて大きく変容する家づくりや住まいの在り方に関心を持つことが、私たちの生活と地球環境とのつながりを考えるきっかけとなってほしい。
地域を支える環境(エコ)活動
株式会社ホームズ
(倉吉市八屋 牧井健一社長)
人にも環境にも優しい家を
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モデルハウス(倉吉市内)のリビング |
持続可能な開発目標(SDGs)を企業理念の柱に据え、家づくりを通じて「健康」と「豊かな未来」の実現を模索する同社。「住む人が心から温まる家づくり」をモットーに、NE−STやZEH(ゼッチ)仕様の高機能な省エネ健康住宅を提案している。
鳥取県産材を新築全棟に採用し、地産地消の推進に取り組む。また、心地良い住環境を保つため、温度や湿度を絶妙なバランスでコントロールする独自の仕組みを持ち、寒暖差のある季節でも一定の快適な空気を循環。最小限の冷暖房機器で省エネ化と家全体の温度差をなくす「温熱的バリアフリー」をかなえた。
目指すのは健康、省エネ、安心にこだわり、人にも地球にも優しい家づくりだ。
三井住友海上火災保険株式会社 山陰支店鳥取支社
(鳥取市扇町、牧村均支社長)
自然災害から命や生活守る
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飲食料品の備蓄など災害への備えをシートでチェック |
暮らしにさまざまな影響をもたらしている気候変動。中でも、頻発し激甚化する自然災害から人々の命と安全を守ろうと、保険代理店組織MSAと連携して防災支援に力を入れている。
飲食料品備蓄や防災グッズの準備、家具の固定、保険加入状況などをチェックできるシートを独自に作成。点検結果に基づいて防災対策のポイントをアドバイスする「防災チェックサービス」を提供している。また、7〜9月は、チェック1件あたり100円が被災地の復旧支援や防災・減災に取り組む支援機関への寄付になるキャンペーンを行っている。
チェック結果によると、55%の家庭で非常用持ち出しバッグを備えていない現状が浮き彫りに。牧村均支社長は「防災チェックをきっかけに気候変動の影響を身近に捉え、命と生活を守るための備えにしてもらいたい」と話している。
株式会社建販
(鳥取市叶 山内智晃社長)
エネルギー循環ができる家
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地域の木材を利用し、エネルギーの循環と自立ができる家を提案 |
スギやヒノキなど地元の木材を使った住まいを提供。世代を超え長く愛着を持てる住宅が、持続可能な地域づくりを目指す鳥取に一軒ずつ溶け込む。
一貫して提案してきたのは、自然エネルギーと自然素材を利用した家づくり。太陽光で発電しながら同時に熱利用も行う「OMソーラー」を採用。ユニット1台で家全体の冷暖房に加え「お湯採り」「全熱交換換気」を実現している。また、自然素材の特徴を生かしたシンプルな意匠と高い断熱性・気密性など建物を支える構造材の性能の高さを両立させてきた。
二酸化炭素の排出ゼロを目指し、エネルギーの循環と自立ができる家でありながら、快適さも手放さない。毎日の暮らしそのものが省エネ活動になる住まいでの暮らしによって、自身を取り巻く環境問題への気づき、次への行動変容につながればと考えている。
日本たばこ産業株式会社(JT)鳥取支社
(鳥取市行徳1丁目、森本昌憲支社長)
市民と一緒に環境美化活動
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米子がいな祭りの会場で清掃活動を呼びかけるスタッフ |
「『ひろう』という体験を通じて、『すてない』気持ちを育てたい」−。JTではそんな願いから生まれた清掃活動「ひろえば街が好きになる運動」を展開している。
2004年から全国各地で2500回以上、195万人が参加している同事業。本年度の鳥取支社においては、鳥取たばこ販売協同組合と合同でJR鳥取駅前などを中心に定期的な環境美化活動を行ってきた。
8月には米子がいな祭りの会場で同運動を実施。社員が来場者に回収用のごみ袋やトングを手渡しながら声かけ活動を行い、市民と一緒に地域の美化活動に汗を流した。同支社の二宮優太支社長代理は「運動が広がり、地域の皆さんが過ごしやすいと思える街づくりにつながればうれしい」と期待する。