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vol.166地域の環境保全 身近にできること
2023.04.26
多様な生態系を育む貴重な自然環境は地域の財産でもある。その恵みを享受し、未来に継承できるよう、身近な地域の環境について関心と認識を深め、環境保全を考えていくことが大事だ。環境先進県を目指す鳥取県でも県民・企業・行政が協働し、可能な環境配慮活動に、積極的に取り組んでいくことが求められている。
鳥取大農学部 小玉 芳敬教授に聞く
自然のリズムゆっくり対応 長期間かけ改善対策を
豊かな自然環境に恵まれた鳥取県だが、湖沼の水質悪化や海岸の浸食など環境保全の課題は多い。自然環境の保全に詳しい鳥取大農学部生命環境農学科の小玉芳敬教授(付属学校部部長兼務)に聞いた。
−鳥取県内の環境保全の課題は。
20年ほど前の新聞記事に、鳥取県の三大湖沼はそれぞれ環境問題が違うと書かれていた。中海は海水が入り赤潮が5月ごろに問題になる。また、湖山池は淡水化によって夏にアオコが発生して悪臭が漂う。一方、中部の東郷池は汽水環境が保たれ、赤潮もアオコも発生しないという内容だった。
湖山池は千代川河口の付け替え前は適度に塩が入り汽水環境だったが、農業利用で水門を閉じたために環境のバランスが崩れた。次に開門で一気に塩分濃度が上がってしまった。一番重要なことは、自然のリズムに合わせてゆっくりゆっくり対応することである。そうすれば、自然への負荷がより少なくなり、自然が逆に対応してくれる。自然のリズムに沿って少なくとも10年スケールでかつての環境を取り戻すべきだということを教訓として学んだ。
−鳥取砂丘の除草活動については。
耕運機を用いた機械除草を始めてから「植生マウンド」という現象が現れた。斜面が凸凹になり、マウンドとマウンドの間の砂がなくなり、火山灰層が露出してしまった。機械除草は効率的だが、自然環境に対しては影響が大きい。そこで除草方法を見直し、10年、20年、それ以上かけて以前の砂丘に戻していこうとしている。湖山池と同様に人間のリズムではなく、自然のリズムで対応することが重要だ。
−鳥取県内でも進む海岸浸食への対応は。
サンドリサイクルは一つの対処法だが、海岸の砂がどれぐらいの年月をかけてどこから運ばれてきたのか、大きな自然の流れを理解すべきだ。高度成長時代に県東部では千代川で重機を用いた大規模な砂利採取が行われ、海岸への砂の供給が減っていった。約20年周期で起こる大出水で流れてきた砂の一部が砂浜に来る。自然を数十年、百年のスケールで捉え、短期と中長期を見通した対策をすべきだ。
−官民協働でまちを美化するアダプトプログラムへの期待は。
若い世代が体験を通じて地球に今何が起きているのか考えるきっかけになることが大切だ。人間が地球環境にインパクトを与える存在であることを考える子どもたちが育っていくことを期待している。それが本当の意味で環境保全、自然保護につながる。
アダプト・プログラム
住民と行政連携し公共の場美化活動
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中海護岸のごみを拾う参加者(昨年6月)
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住民(企業含む)と自治体(都道府県・市町村)が互いの役割分担を定め、両者のパートナーシップの下、協働で公共空間の清掃、美化活動を進める制度。各自治体で導入されており、市民の環境などへの意識を高めるとともに、住民と行政の連携によるまちづくり推進のきっかけとなることなどが期待される。
アダプト・プログラムは「里親制度」と訳される。ボランティアで「里親」となる住民が道路、公園、河川敷、湖岸など一定区画の公共空間を「養子」とみなし、定期的・継続的な清掃などで面倒をみる取り組み。
鳥取県内では鳥取砂丘、湖山池、東郷池、中海沿岸などでも活動が展開されている。
地域を支える環境(エコ)活動
有限会社大成商事
(米子市夜見町 佐田山一成社長)
楽しみながら資源回収
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タイセイくんの古紙ランド西福原店(米子市) |
家庭や事業所から出る新聞や雑誌、段ボールなどの古紙類を回収する「タイセイくんの古紙ランド」を運営する。
年中無休の無人システムで、24時間いつでも利用できる。重さに応じてポイントを付与(午前7時〜午後8時)。
500ポイントためると500円のクオカードがもらえる。地域住民の利便性を第一に考え、楽しみながら環境活動に参加できる仕組みをつくった。
2016年の境港店を皮切りに店舗数を増やし、現在は鳥取県西部で6店、島根県で2店(松江市東出雲町、安来市)を運営。佐田山社長は「世界一きれいな資源回収施設を目指したい」と意気込む。
わたしたちのちょっとエコアクション ながらエコ、ついでエコ
暮らしの中でエコにつながる行動はさまざま。「何かをしながら」「何かのついでに」できると、気負うことなく続きそうだ。肩肘張らず、手軽に取り組む県民エコ活動を紹介する。
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ウオーキングの合間に除草作業などをしてエコ
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Q あなたのエコ活動は?
橋本 睦夫さん(北栄町)
A 毎日のウオーキング時に清掃もしてエコ
病気を経験し、体力づくりも兼ねてウオーキングを始めました。歩く途中でペットボトルや弁当殻、吸い殻など多くのごみや背丈まで伸びた草などが気になるようになり、足を止めて清掃や除草に取り組んでいます。以前よりごみは減りましたが、きれいにすることでもっとごみが捨てづらい環境になると思っています。草で覆われていた道路沿いのツツジやサツキもよく見えるようになったので、きれいな花が楽しめそうです。
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