2022年度の日本国内における食品ロス量は、約472万トン(事業系、家庭系ともに約236万トン)。前年度と比較し、食品関連事業者から発生する事業系は約43万トン、家庭系は約8万トン減った。食品ロスを100トン削減できれば、46トンものCO2を削減できるというデータもある。
規格外のモモ活用 スイーツなど販売
鳥取・神戸地区のNPO法人が企画 イベント盛り上げに一役
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くずモモのスイーツなどを販売し、盛況だった昨年の「桃フェス」 |
鳥取県内有数のモモの産地、鳥取市神戸地区で収穫され、傷やへこみ、大きさなどの問題があって規格外に判別された“くずモモ”を有効利用したメニューが、地域イベントの盛り上げに一役買っている。
同地区では、収穫したモモの2、3割は規格外で市場に出荷できず、捨てられることもあるという。
「せっかく育てたモモを何とか有効活用できないか」。同地区でモモの栽培を手がけるドローン運航会社「NEXTMOTION(ネクストモーション)」から相談を受けたのを機に、食品ロス削減啓発を兼ねた「桃フェス」を企画したのが、同地区でフリースクールを運営するNPO法人「はなとたね」(同市中砂見、河上美穂代表)だった。
「第1回桃フェス」は昨年7月、同地区内の「トリノス神戸(旧神戸小)」で開かれた。賛同した地域の団体・事業者が考案した、くずモモのドリンクやスイーツなどを販売する屋台が登場。加工品になっても、口の中に広がるモモの優しい甘みは健在で、同地区産モモの魅力発信にも大きく貢献した。SDGsクイズ大会やステージ公演などもあり、会場は約千人の来場者でにぎわった。
「生産農家が手塩にかけて育てたにも関わらず、売ることができないモモを“生き返らせる”場ができたことを地域の方々にも喜んでもらえた」と話す河上代表。第2回桃フェスの開催を7月19日に予定しており、「昨年は、くずモモメニューが早めに売り切れてしまった。今年はもっとモモを楽しんでもらえるよう、地域を挙げて準備したい」と意気込んでいる。
フードドライブ 「参加しやすく」 県生協、取り組み模索
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地域食堂の中間支援団体に寄付食品を渡す大西さん(右) |
食品廃棄量の半分を占める「家庭系食品ロス」を減らすため、鳥取県生活協同組合(鳥取市、井上約理事長)は、同組合員らに家庭で余った食品を持ち寄ってもらい、地域の福祉団体や地域食堂などに寄付する「フードドライブ活動」を実施。意欲があっても参加しづらい態勢を問題視し、より多くの人が食品ロス削減に関われる形を模索している。
同組合が理念に掲げる「地域貢献」の一環として、鳥取県の委託を受けて2019年から取り組んでおり、24年以降は同組合独自で継続している。
毎年9、10月の約2カ月間、同組合各支所とココ・ステーションに家庭の余剰食品を持ち込んでもらう。賞味期限まで2カ月以上ある未開封で常温保存可能なコメや乾麺、缶詰、調味料などに限って受け入れている。
24年に集まった食品の総量は990点、1508キロ。点数、総重量共に23年の半分以下となった。コメ不足や物価高騰などがその一因と考えられており、今後、取り組み期間の延長や引き取り場所の拡大を検討予定。担当者の大西順一さんは「いつでも誰でもフードドライブに参加できるよう、仕組みを整えていきたい。食品ロスの現状を知るきっかけになれば」と話している。
わが社の環境(エコ)活動
株式会社光商会
鳥取市五反田町 木村憲司社長
省エネ推進、二重窓を施工販売
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ショールームでカバー工法の内部構造などを紹介 |
「安心・安全・快適で笑顔あふれる暮らしづくりに貢献する」の経営理念に基づき、日常生活を支える幅広い事業を展開している。石油事業、車検事業、板金、塗装事業などに加え、建材事業では燃料代削減、CO2の排出抑制に効果がある二重窓の施工販売を通し、環境に優しい社会づくりを推進する。
国が実施する断熱窓への改修支援事業が最終年度ということもあり、二重窓の需要は好調。断熱効果を実感し、リフォームのリピートをする人も多い。消費電力を抑えられ、電気代の高騰に対応できる点も魅力。既存の部材を新たな部材で覆って施工する「カバー工法」の採用で、工事は半日で完了できる。
5月初旬、本社に同工法を展示する県内初のショールームを開設。二重窓の利点を広め、省エネ意識向上に貢献していく。
#私たちのグリーンムーブメント−若き担い手たち
鳥取大・学生団体「すなめぐ」
余剰食材、学内で無料配布
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食材配布には毎回100人近くの学生が集まる |
学生と地域社会の架け橋になることで、食品ロス削減に取り組む鳥取大の学生団体。農家の声に耳を傾けながら、「少しでも食材の廃棄を減らしたい」と実践を積み重ねていく。
大学の授業で、食品ロスの実態などについて学んだのをきっかけに、2022年6月に設立。現在は鳥取大の1〜3年生約20人のメンバーが、JAグループや食品卸会社から規格外などの理由で出荷できない余剰食材を引き取り、2カ月に1度開かれる学内イベントで学生に無料配布する活動を展開している。
昨年度からは、鳥取市内3件の農家で収穫などのボランティアも開始した。前団長の余田早知香さん(農学部3年)は「活動を通じて農家の思いを聴くことが増えた。農業が大変なことを知っているからこそ、せっかくできたものを捨てなければならない現実を変えたい」と熱く語る。
今後は学生だけでなく、地域住民への活動の周知も目指す。余田さんは「環境問題やSDGs(持続可能な開発目標)の言葉は浸透してきたが、現状を変えるために、知るだけでなく自分たちができることを実行してほしい」と願う。