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vol.188 進む環境教育
2025.2.24
未来を担う若者たちに環境保全活動を促す環境教育の重要性が高まっている。環境教育は、地球環境の悪化に歯止めをかけ、持続可能な社会を構築していくための“第一歩”でもある。鳥取県内には、漁業や農業など地場産業、地域振興への貢献を見据え、探究活動を実践する高校もある。取り組みの一端を紹介する。
湯梨浜学園高(湯梨浜町)
山や森で動物の痕跡調査
鳥獣被害の現状と課題研修 環境保全のエキスパート育成
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屋久島では国有林の環境保全について学んだ |
恵まれた自然環境と地域との関わりを生かし、中高一貫での環境教育を取り入れている。本年度から文科省の「スーパーサイエンスハイスクール(SSH)」指定校(5年間)となり、環境保全と地域活性に着目した独自プロジェクトを確立。生徒たちは森や海の環境保全について学びながら、人と自然の共生社会へ向け理解を深めていく。
創造性豊かな科学技術人材の育成を目指すSSHの新たな枠「文理融合基礎枠」での指定を受け、初年度は地元の山や海、世界自然遺産の屋久島(鹿児島県)などを舞台に動物の生態調査に取り組んだ。
鳥取市の摩尼山では、狩猟資格を持つ岩田直樹校長の指導の下、「鳥獣被害の現状と課題」をテーマに研修。生物の痕跡調査のため、山中でシカやイノシシの足跡や爪痕、ふんなどを探索し、付近の農家から鳥獣による作物の食害状況を聞き取るなどした。
生徒たちは獣道に取り付けたトレイルカメラで動物の行動を監視し、畑や人の住環境周辺へのわなの設置を提案。後日調査で「動物の往来が減った」などうれしい成果も得た。
田栗雅也さん(2年)は「自分たちの間近で息づく自然を感じることができた。ただ、猟師さんたちが苦労して狩猟しても、処理する施設の不足で埋設か、自家消費しか方法がないという現状も知った」と振り返り、「肉を流通させるシステムの構築を考えていかなければ…」と将来へ思いをはせた。
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摩尼山で岩田校長(左)から鳥獣被害について話を聞く生徒たち |
昨年11月の屋久島訪問では、森林が持つ公益的機能の維持に向けた国の取り組みや鳥獣害対策などを学び、国有林でサルやシカなどの痕跡調査も実施。中川大空さん(2年)は「食害があるから駆除するのではなく、適切な個体数に戻すことが大切だと学んだ。人と動植物が共に暮らすための方法を考えていきたい」と力を込めた。
プロジェクトでは今後、オーストラリア・ケアンズでの海洋、森林保全活動の研修も計画。岩田校長は「地域から全国、海外へとスケールアップして視野を広げ、さまざまな取り組みに挑戦することで、国際的な環境保全のエキスパートとなる人材が育ってくれればうれしい」と期待を込める。
境港総合技術高(境港市)
水中ドローンで海洋調査
沈船と人工漁礁周辺を撮影 〝スマート水産業〟推進へ探究
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水中ドローンの調査に取り組んだ生徒たち |
境港総合技術高の海洋科は、課題研究の一環で、水中ドローンによる海洋調査に取り組んでいる。本年度の調査では、松江市美保関沖の沈船と米子市淀江沖の人工漁礁の周辺を撮影した。気候変動が魚の分布や漁獲量に変化をもたらすといわれる中、水中ドローンで記録した映像や水温などのデータを活用することで、漁業の効率向上や持続可能な“スマート水産業”の推進に役立てようと探究を重ねている。
水中ドローンは昨年度導入され、本年度は3年生7人が海洋調査を実施。1月30日に行われた課題研究発表会で、成果を披露した。
美保関沖の沈船は、昨年度の調査で周辺にタイやヒラマサなど魚価の高い魚が確認されたことから、漁場としての有用性に着目した。本年度の調査は昨年6月に行い、水温18・5~19度で、ネンブツダイ、ウマヅラハギ、イシダイ、クロソイを確認。「水中ドローンの映像とデータから魚種と水温の関係をさらに解明できれば、沿岸漁業の漁場選定に貢献できる」と考察した。
淀江沖の人工漁礁の調査は、「漁業体験でお世話になった地元の漁師さんに恩返しをしたい」と、昨年11月に撮影を行った。天候などの条件にも恵まれ、周辺にイシダイ、メジナなどの魚が集まっている様子を鮮明に捉えたほか、漁礁の一部が砂に埋没している現状などを映像に記録し、漁業者に報告した。
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淀江沖の人工漁礁周辺で撮影された映像の一部(昨年11月) |
調査は船上での安全確保、撮影、動画編集など役割分担をしながら協力して進めた。昨年6月の調査では県水産試験場の水温分布図と比較し、2週間で1度海水温が上昇していることが分かったほか、海中に残留した漁具が海の生き物に危害を与える「ゴーストフィッシング」が起こっている可能性も確認された。
撮影に挑んだ門脇琉晟さんは「映像を通じて現状を知ってもらい、海の環境や水温上昇を防ぐ方法について考えるきっかけになれば」と話す。
同校の海洋科には来年度、新たに「海洋探究類型」が創設され、大学進学を見据えた探究活動や地域連携、スマート水産業推進にさらに力を入れる。檜山盛生教諭は「温暖化による影響は年々進み、『魚が獲れなくなった』という声も聞く。米子高専や鳥取環境大とも連携して水中ドローンの活用を進め、地域の漁業に貢献したい」と展望する。
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