特集一覧 |
2024
2023
2022
2021
2020
2019
2018
|
|
|
vol.141多様な生態系を守る
2020.12.28
地球上のさまざまな環境に生息、生育する生き物は極めて多種多様だ。人間もこの地球という大きな生態系の一員であり、目に見えない生き物との関係を大切にすることが、暮らしを守ることにもつながるという。鳥取県内でも、多様な生態系を守るための活動が展開されており、その一つ一つが私たちに今できることは何かを問い掛けている。
活動の広がりを実感
中海・宍道湖ラムサール条約登録15周年
|
15周年記念イベントで未来宣言を行った鳥取、島根両県の関係者(10月31日、米子コンベンションセンター) |
鳥取、島根両県にまたがる汽水湖の中海が、国際的に重要な湿地を保全するラムサール条約に宍道湖とともに登録されて11月で15年の節目を迎えた。水質改善への道のりは険しいが、保全・再生、ワイズユース(賢明利用)運動の輪は確実に広がっている。
中海は1995年、コハクチョウなど多くの渡り鳥が飛来する彦名干拓地に、米子市が米子水鳥公園を整備。10年後、中海はその豊かな生態系が認められ、同条約に登録された。
中海は、高度成長期に計画された国の干拓・淡水化事業(2002年までに中止)の影響や生活排水の流入などで水質が悪化したが、条約登録を機に市民の関心も一気に高まった。
沿岸では自治体が呼び掛ける一斉清掃や「中海アダプトプログラム」による美化活動が浸透。中海の藻場の再生や藻を肥料にした農業も広がりを見せる。11年に始まった「中海オープンウオータースイム」では県内外の多くの選手が「泳げる中海」を体感する。
「子どもラムサールクラブ」の活動をはじめ、学習拠点としてその役割を担ってきた米子水鳥公園の神谷要館長(48)は「条約の意義が浸透し、活動の広がりを感じる」と話す。1989年から手作りの環境新聞「中海」を毎月発行(累計401号)し、啓発と実践に取り組んできた同市彦名町の向井哲朗さん(79)は「中海は先人から譲り受けた財産。次世代に引き継ぐ責務がある」と語った。
独自ルールで資源再生 鹿野河内保護協会
|
協会のメンバーは看板設置や発眼卵の放流で生態系の保護に取り組む |
川に生息する魚を守ろうと活動している鹿野河内保護協会。住民や渓流釣りの愛好家らが主体となって、生態系の保護に取り組む例は全国的にも珍しく、ローカルルールを設けて地道な活動を続ける。
2015年に発足した同協会は、釣り人を中心に約10人で構成。環境の変化などで、イワナやヤマメなどの渓流魚が激減していることに危機感を覚え、資源の再生を図るために独自のルールを設定した。魚が産卵する上流を保護区域とし、キャッチアンドリリース(再放流)を呼び掛ける。加えて下流域でも、持ち帰りは体長20センチ以上、10匹までと制限し、看板の設置とパンフレットを配布。住民の理解もあり、地域全体で見守る意識が醸成されている。
発足当時は成魚を放流していたが、カワウの捕食被害があり、現在は受精し成熟した卵「発眼卵」を放流している。「ヤマメは昔、体長30センチだったが、今は25センチがやっと。全国的にアユもいないし、深刻な事態」と話すのは、同協会の土橋敬明会長(65)。独自に多方面から資料を集め、稚魚が育たない原因を長年探っている。
土橋会長は「稚魚のえさとなる水生昆虫の減少など、人間の目には見えない世界だから、一見何の変化もないように見えてしまう」と指摘。「この問題は根が深い。一部の団体だけでは川は守れないが、活動を続けることに意味がある」と話す。
気候変動時代を生きる「答えのない時代」見極めを
10年間、地球温暖化防止活動推進センターを運営してきて、最もショッキングな国際比較調査がありました。「人間活動が気候変動につながっている」という理解について、日本が29カ国中、断トツの最下位になったのです。
アメリカ、ロシア、サウジアラビアなど資源国で、化石エネルギー企業が気候変動否定政策に多額の献金を投じた国々であるなら何となく想像もできますが、「資源もない日本が資源国をはるかに下回る数値になるとは…」と、専門家も首をひねる始末。
いまだに新設石炭火力計画が温存されていたり、やっと国が脱炭素を宣言したかと思った矢先、国を代表する自動車会社のトップが「すべてEV(電気自動車)化なら、ピーク発電10〜15%増必要」と発言しました。世界ではEVの柔軟な放充電が電力系統に貢献する議論が盛んに行われているにも関わらず…です。
2030年のエネルギーミックスで、再生可能エネルギーの使用率がまだ20%台にも関わらず、それを飛び越し「水素による蓄電を−」と一般家庭にまで補助金を出したり、「陸上風力は下火」と地方議会で発言があったりと、社会を動かす立場の人々によるフェイクまがいの情報発信は枚挙にいとまがない状況です。国民が正しさを重視できないのも無理はないのです。
脱炭素に向かう世界的な流れは、黒船来航以来の変革です。すでに経済のルールが変わっている中、今まで通りに内向きの利益を追うため、真実に目を向けないのでは当然、国際競争にも負け、結果自分の利益だけではなく、地域の利益も持続可能性も損ねることにつながります。
誰も経験したことのない「答えのない時代」だからこそ、フェイクとファクトを見極める科学的な思考と議論を切に願います。
(鳥取県地球温暖化防止活動推進センター・山本ルリコ)
トップが語る環境問題
海洋ごみ削減でSDGs達成
北溟産業有限会社(倉吉市岡)
代表取締役社長 中川 優広
スマホの航空写真で海岸沿いを見ると、発泡スチロールと思われる漂着ごみのホットスポットが多く見受けられます。岩場の漂着ごみは回収が困難なため、放置されることがほとんどです。
持続可能な開発目標(SDGs)では、2025年までに海洋ごみを大幅削減するとしていますが、このホットスポットを無くすことが課題の一つです。
SDGsは、全ての人の健康と福祉も目標にしています。それには伝染病や感染症への対処といった問題も解決しなければなりません。コロナ禍にあって、社会全体でのSDGs達成に向けた取り組みが重要であると考えます。
環境学習通じ、子どもの育成
株式会社白兎環境開発(鳥取市千代水)
代表取締役社長 奥田 貴光
長い海岸線で海と接する鳥取県では、漂着ごみは非常に身近な問題です。こうした問題に目を向けてもらおうと、弊社では「HAKUTO DAY」と題したイベントを昨年に続き開催しました。
賀露、世紀、湖山の少年野球チームと一緒に海岸清掃をしたところ、漁具や流木だけでなく、注射器や灯油缶などの危険なごみも多く見つかりました。子どもたちはごみの多さに驚いていたようですが、きれいな状態にするために地域の人が陰ながら努力されていることを忘れてはいけません。これからも環境学習の機会提供を通じて、子どもたちの育成にも取り組んでいきます。
地域コミュニティーの一員!
日本たばこ産業樺ケ取支店 (鳥取市行徳)
支店長 辻本 公治
私たちJTは、責任ある地域コミュニティーの一員として、「格差是正」「災害分野」「環境保全」の3領域を社会貢献活動の重点課題と位置付け、地域社会の再生と活性化に貢献する活動に力を入れています。ここ鳥取県においても、市民参加型の清掃活動の「ひろえば街が好きになる」や鳥取砂丘一斉清掃、大山一斉清掃活動へのごみ袋の提供など、環境美化と喫煙マナーの向上を目指しています。また、境港市における「竹内マツ植樹隊」の活動サポートを通じて地域社会の環境保全に貢献するなど、さまざまな活動に取り組んでいます。
|
|