私たちの生活に欠かせないプラスチックは、燃やされるときに温室効果ガスが発生し、地球温暖化の一因となる。海に流出すると、波などで削られて細かくなったプラスチックのかけらを飲み込んだ海の生き物、それを食べる人間などへのさまざまな影響も懸念される。今、世界中で深刻化する「プラスチックごみ問題」への対策が急がれる。
鳥取環境大学生 EMS委員会 取り組み
“食べられる器”やバガス製登場 5420食分転換、10%削減成果
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食べられる容器で脱プラスチック≠実践 |
学内外で環境活動を実践する学生たちでつくる「鳥取環境大学生EMS委員会」(田路茉那委員長、54人)は近年、活動の中心が清掃活動からプラスチックごみ問題や脱炭素問題に関するものにシフトしつつある。昨年10月の大学祭「環謝祭」ではプラごみゼロの取り組みを実施し、成果を上げた。
2日間にわたって開催した昨年の環謝祭は、分別と洗浄の負担軽減、プラスチックごみ排出による環境負荷の低減をテーマに掲げた。県の「とっとりプラごみゼロ」チャレンジ事業補助金を利用し、学生が運営する飲食店舗約8割の容器の注文をとりまとめ、プラ容器ではなく、食べられる容器や可燃ごみとして処理でき、土にかえるバガス製の容器を購入。店舗にはごみの分別啓発ポスターを掲示した。
結果、5420食分の容器がプラスチックから転換。2022年度にごみ全体の約32%を占めていたプラスチックごみは、約23%に減った。
また、今年7月からは学内にウォーターサーバーを導入し、ペットボトルごみを削減。今後も、忘れ物の傘や使い捨てコンタクトレンズのケースを集め、再利用やリサイクルをする仕組みづくりを検討している。田路委員長(2年)は、「本年度の学祭でも新しい取り組みを考えている。学内だけでもリサイクル率を上げていきたい」と意気込む。
おそうじカヤック 海洋ごみ問題学ぶ
岩美でスタディーツアー
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今年から漁業組合も海洋ごみ回収を始め、ごみは少なかった |
山陰海岸ジオパークの自然の中でアクティビティー体験を提供する「鳥取県自然体験塾(USKAYAK)」(長谷川浩司代表)は、シーカヤックを楽しみながら、プラスチックごみなど海洋ごみ問題について学べるスタディーツアー「おそうじカヤック」を実施している。
7月16日におそうじカヤックを体験した岩美北小(岩美町)の5年生40人は、4班に分かれ、1人1艇のカヤックに乗り込み、同町牧谷の熊井浜へ。打ち上げられた海洋ごみを拾いながら、人間が出したごみが生物や環境に悪影響を及ぼしている海の現状を学んだ。約2時間で集まった120リットルのごみ袋三つ分のごみは、漁具やペットボトル、発泡スチロールなどプラスチックごみが大半を占めた。
同校では総合的な学習として、ツアーが始まった2017年から毎年体験を実施。大高悠紀教諭は「岩美の海の美しさを再認識し、自分たちに何ができるかを考える機会になれば」と話した。
わが社の環境(エコ)活動
日本たばこ産業株式会社(JT)鳥取支社
鳥取市行徳1丁/木村浩也支社長
ごみ拾いで捨てない心育む
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米子がいな祭では、脇道にも入り、隅々までごみを拾った |
市民参加型の清掃プロジェクト「ひろえば街が好きになる運動」を展開。「『ひろう』という体験を通じて、『すてない』気持ちを育てたい」という願いから、毎年全国各地で活動を行う。
2004年5月開始以降、日本全国で2892回にわたり延べ約200万人以上が参加している。今年8月の「米子がいな祭」でも同運動を実施し、120人が参加。受け付けでトングとごみ袋を配り、拾ったごみを分別してもらった。参加者からは「普段は気にしていなかったが、思った以上にごみが落ちている」など取り組みの意義を再確認したという声が寄せられた。
11月には境港で開かれるイベントの会場でも開催予定。同支社の二宮優太支社長代理は「今後も鳥取県全域で取り組みを広げていき、ごみを捨てない人がこれからも増えていけばうれしい」と話す。
未来へつなぐ私のチャレンジ 公立鳥取環境大学通信
(6)不法投棄解決へ実態探る ごみの種類ごとに対策重要
大学院 環境経営研究科 環境学専攻2年 中嶌早季子
私は不法投棄について研究している。不法投棄に関心を持ったきっかけは、大学の講義で海洋プラスチックごみを誤食して命を落とした生き物の写真を見たからである。さらに海洋ごみの約8割は陸域で発生したごみということを知り、生態系を守るためには不法投棄問題の解決が必要であると感じ研究を始めた。
鳥取県の不法投棄について、行政の不法投棄の監視報告書を基にデータの集計を行い、どの時期にどのようなものが投棄されやすい傾向にあるのかを調査した。
食品容器などの比較的小さく軽いものが、最も件数が多かった。処理費用がかかる家具や家電は冬から春にかけて増え、これは、大掃除や引っ越しの時期と重なる。小売店での商品購入時や、引っ越し業者や不動産業などにおいて、不要物の処分方法や不法投棄に関する啓発を行うことが、有効と考えられる。
また、転居する人が多い大学では、不要になった家電・家具を必要とする人へ提供するといった再使用を促進することも必要と考えられる。ごみの種類ごとに効果的な対策を講じることが重要だと感じた。
人々の行動を変えることは容易ではないが、啓発活動などの対策によって、ごみの適切な処分を意識する人が増えていくことを願っている。