特集一覧 |
2024
2023
2022
2021
2020
2019
2018
|
|
|
vol.129 新たなステージ迎えた環境とビジネス
2019.8.30
かつて環境対策へ取り組む企業のイメージといえば、ボランティアや寄付活動が主で、経営の観点とは相反するものと考えられていた。現在、地球温暖化対策の国際的枠組み「パリ協定」をきっかけに、世界の潮流が低炭素から脱炭素社会へ向かうことになり、企業は持続可能な経営のため、環境対策を自社の利益に生かそうと、積極的に取り組んでいる。今回は、環境とビジネスの関係について紹介する。
地域資源から経済循環生み出す
鳥取県地球温暖化防止活動推進センター長 根本昌彦氏に聞く
|
「中小企業の省エネ対策はこれから」と語る根本センター長 |
鳥取県地球温暖化防止活動推進センターの根本昌彦センター長(鳥取環境大教授)に、企業の環境対策とビジネスの関係について聞いた。
−環境経営と環境ビジネスの違いは。
環境経営は1990年代にかけて定着した概念。企業が環境問題に積極的に取り組み、環境負荷を低下させることで持続的成長につなげる経営手法。省エネの取り組みや企業の社会的責任(CSR)を果たすことを示している。
一方、環境ビジネスは、環境負荷の少ない製品や技術、サービスの提供を行う企業活動。2015年に採択された「パリ協定」前後から増加傾向にある。
−現状は。
環境経営は、大手企業を中心に取り組みが一巡した感があるが、中小企業はこれからといったところ。具体的な電力使用量などの数値を可視化してPDCAサイクルを回すことが温室効果ガスを削減し、経営改善につながりつつある。
現在の環境ビジネスは、持続可能な開発目標(SDGs)とともに新たなステージを迎えている。企業が存続するためには「地域」にフォーカスして、地域資源から経済循環を生み出す仕組みを構築することが重要だ。鳥取環境大でも今年度後期から、同仕組みを取り入れている鳥取の経営者に好事例を学ぶ授業を開始する。
−SDGs時代の企業の在り方は。
環境への取り組みと同時に、SDGsの17の目標に掲げられた社会的課題の解消に積極的に取り組む姿勢が必要。地域社会全体の持続可能な未来という時間軸で考えないといけない。
次世代のビジネスモデル創出
中小企業無料省エネ診断 とっとり環境エネルギーアライアンス合同会社
|
|
省エネ診断の様子(電力消費量の測定) |
鳥取市と民間事業者が共同出資して設立した「とっとり環境エネルギーアライアンス合同会社(TEEA)」(同市湖山町東、荒木健二代表社員)は、2017年度から国の「省エネルギー相談地域プラットフォーム構築事業」に山陰地方で唯一参画。次世代のビジネスモデルを地域から創出することを目的に、鳥取県内の中小企業に対して無料で省エネ診断を行っている。
同診断では、鳥取商工会議所やNPO法人山陰エコライフ研究所と連携して、中小企業に経営、エネルギー、改善・施工の専門家を派遣し、無料できめ細かな支援を行う。エネルギー量の計測や設備の運用法などを聞き取りして、具体的な改善策を助言する。
同社はプラットフォームとしての役割とワンストップな対応で、中小企業の省エネに関する取り組みを促進し、コスト削減と生産性の向上による経営改善を後押しする。17年度は12社、18年度は11社の診断を行った。
同診断を受けた中央印刷(同市南栄町)の松下顕吾社長は「電力使用量を可視化することで、ピーク時の最大電力を抑制し基本料金削減につなげることができた。また、工場全体の省エネ化に成功したことで、補助金申請要件を満たして設備投資につながった」と喜ぶ。
同市経済観光部経済・雇用戦略課の保木本淳主幹は「省エネに真剣に取り組んでいる企業は確実に成果を出している。地方から新しいビジネスモデルを全国に示したい」と意気込む。
気候変動時代を生きる
自然エネルギーを学ぶ
|
太陽追尾式太陽光発電を見学する子どもたち(米子市彦名町) |
夏休みに鳥取県内の高学年児童らを集めて、自然エネルギーへの理解を深めるバスツアーがありました。ツアーでは、県の自然エネルギー比率が全国平均と比べて約20%も高い理由を探ろうと、再生可能エネルギー関連施設を見学しました。
子どもたちが注目したのは、太陽に向けて動くトラッキングシステムのソーラーパークや農地のため池に浮かぶ水上太陽光発電所です。設置者から「降り注ぐ太陽のエネルギーを電気にしないともったいない」という説明を受けながら、熱心にメモを取り、二酸化炭素を排出しないよう努力する姿勢を学びました。
さらに、鳥取環境大の学生からは、このまま化石エネルギーを使い続けて地球温暖化が進むと、スーパー台風などの異常気象がひん発する未来が訪れることを教わり、自然エネルギーがもっと増えるような取り組みや工夫を多くの人に啓発するため、ポスターを制作しました。
しかし、子どもたちのこのような思いとは裏腹に、石油の貿易ルートでは自国に輸入するための石油タンカーの安全を確保しようと、「有志連合」という名の多国籍軍が集結しつつあります。化石エネルギーは、地政学的にも歴史的にも紛争の火種をつくりだします。
自分たちの住む地域に、自然エネルギーがこれほど豊かにあふれていることを学ぶ必要があるのは、本当は大人の方かもしれません。
(鳥取県地球温暖化防止活動推進センター 山本ルリコ)
トップが語る環境問題
公共性と社会的使命認識
公益財団法人 鳥取市環境事業公社(鳥取市秋里)
理事長 星見 喜昭
鳥取市環境事業公社は、清潔な市民生活の環境を保全し、公衆衛生の向上に寄与することを目的として、鳥取市の廃棄物の収集運搬事業や下水処理場運転管理のほか、リサイクル事業を業務展開する法人です。
その公共性と社会的使命の重さを認識し、日々の業務を通して地域住民の環境保全に貢献するとともに持続可能な社会の実現に寄与していきます。
廃棄物の種類は市民生活の多様化に伴って増え続けており、ごみの適正処理については大きな課題であると認識しています。さまざまな取り組みを展開するとともに社会貢献していきたいと考えています。
砂丘一斉清掃で親睦
リバードコーポレーション株式会社(鳥取市徳尾)
代表取締役社長 川口 大輔
川口グループは、例年春と秋に行われる「鳥取砂丘一斉清掃」に参加しています。当グループ企業間の垣根を超え運営されている「Kawaguchi モラルKAIZEN委員会」では、リバードプロダクションの前橋委員長がリーダーシップを取り、同メンバーとともにこのイベントへ参加。
うれしいことに普段交流の少ない多くのメンバーとその家族とが共に清掃活動を行うことにより、当日は笑顔や笑い声の絶えない、活気ある一大イベントとなっています。
我々の愛するこの鳥取の大自然環境維持のため、明るく楽しく今後も活動継続し取り組む方針です。
|
|