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vol.122下水から発電 秋里下水処理場バイオマス発電所 稼動から1年
2018.10.30
下水処理施設から発生する消化ガスを活用した鳥取市の「秋里下水処理場バイオマス発電所」は、昨年11月の稼働から約1年が経過。10月末までの年間発電量は約149万キロワットが見込まれており、当初の想定発電量を6%程度上回りそうだ。地域電力会社「とっとり市民電力」(児嶋太一社長)が推進する再生可能エネルギーを用いた電力の地産地消プロジェクトの一つが、順調なスタートを切った。
消化ガス燃料に電力供給 とっとり市民電力
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秋里下水処理場バイオマス発電所 |
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中国地方初、下水施設で発電
固定価格買い取り制度(FIT)を利用した、中国地方初の下水処理施設での消化ガス発電事業として注目された同発電所。鳥取市所有の「秋里下水終末処理場」(同市秋里)内に、「鳥取ガス」(鳥取市)が発電設備を設置し、とっとり市民電力が鳥取市から購入した消化ガスの供給を受け、発電事業を行っている。
下水から汚れを取り除く過程で発生する汚泥中の有機物を消化槽の中で発酵させることで、メタンを主成分とする消化ガスが発生。発電所にはこの消化ガスを燃料として発電するマイクロガスエンジン8基を導入し、稼働させた。
発電量は風力、太陽光など他の再生可能エネルギーと比較し、天候に左右されることなく年間を通じて安定していた。発電した電力はとっとり市民電力に売電し、公共施設や企業、一般家庭に供給している。1年目の発電量は、一般家庭約400世帯が1年間に消費する電力量に相当する。
環境に優しい再生可能資源
消化ガスは、二酸化炭素(CO2)を吸収して生産されるため、地球規模では大気中のCO2を増減させないカーボンニュートラルな再生可能エネルギー。同発電所の稼働に伴い、CO2の削減量は年間374トンが見込まれている。
とっとり市民電力から、発電事業者として指定を受けている鳥取ガスの担当者は「消化ガスは、CO2を一方的に大気中に放出する化石燃料に代わる新エネルギーでもあり、地球温暖化防止、低炭素化社会の実現に貢献できる」と強調。「エネルギーの循環型社会を構築していくため、消化ガスや太陽光などで発電した“エネトピアでんき”を一軒でも多くの家庭に利用してもらいたい」とPRしている。
エネルギーの地産地消 スマートエネルギータウン構想
電力の自由化によって、分散型発電が拡大する中、鳥取市と鳥取ガスが出資し、2015年夏に設立した鳥取県初の地域電力会社「とっとり市民電力」が核となって、地域で発電した電力を地域で活用する「エネルギーの地産地消」を推進している。
鳥取市が掲げる「スマートエネルギータウン構想」では、再生可能エネルギーの導入・普及と効率的な活用を含めたエネルギーの地産地消によって、地域内で資金循環が活発化。地域経済の活性や雇用の創出など、地方創生につながるまちづくりをイメージしている。
地球温暖化はいま
【1.5℃の地球温暖化】
上昇幅と生態系リスク報告
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韓国・仁川で特別報告書を公表するワーキンググループ(シャッターストック提供) |
世界的に異常気象が頻発(ひんぱつ)する中、国際的な専門家でつくる気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が、政策決定者向け特別報告書『1・5℃の地球温暖化』を発表しました。気温の上昇幅が2度と1・5度との場合の影響を比較し、生態系が受ける影響などにおいて、2度の方がより悪影響が大きくなるリスクとともに、当時努力目標とされた1・5度に目標を修正すれば人類と生態系が適応し、妥当なリスクの範囲内に留まれる余地が広がると、科学的に訴える内容です。
産業革命以降、地球の平均気温はすでに1度上昇しています。人類は数万年の間、地球史上まれに見る穏やかな気候の中で繁栄してきましたが、たった1度の気温上昇ですら、身近なところでは本州でゴーヤーが育つようになり、桜の開花や紅葉の時期が2〜3週間もずれ、台風の数は増加し、進路は東北や北海道を過激に通過、リスクを無視して開発された地域や地盤の脆弱(ぜいじゃく)なところ、都市化され自立できない地域を襲うようになりました。この状態であと1度の上昇を待つことは、将来世代である子どもたちへの裏切り行為と言っても過言ではないでしょう。
そんな中起きた九州での大規模太陽光発電に対する出力停止は、再エネを推進し温室効果ガスを実質0にするロードマップ上にあって、「火力発電所や原発は出力抑制をこまめにできないから」という先進国からは失笑を買うようなベース電源理論と、それまでに投じた再エネへの税金や投資の無駄につながる失態とも言われます。
地球の平均気温を1・5度に抑えながらも現代世代の利益や快適性を損なわず、それどころかますます発展する社会への物理的・制度的技術を我々人類はすでに獲得しつつあります。しかし、それを政策や経済、社会基盤づくりに上手に組み込み実現させる、縦割りを超えたアイデアを発揮すべき時は、今なのだと報告書は語っています。
(鳥取県地球温暖化防止活動推進センター山本ルリコ)
トップが語る環境問題
新ブランド「エネトピア」
鳥取ガス株式会社
(鳥取市五反田町)
代表取締役社長 児嶋 太一
本年7月、私たちは創立100年を迎えブランドを「enetopia(エネトピア)」へ一新いたしました。この新たなブランドには「エネルギーの創出と地域の活性化」「地域の人々とともに実現する理想郷」といった、未来の子どもたちや地域、永続的な経済システムを構築する姿勢を込めています。
現在、私たちはエネルギーの地産地消を目指して、鳥取市内でメガソーラー、下水処理場バイオマス発電所などの発電事業へ参画しています。これからも私たちは、エネルギー・サービスの地産地消と地域内経済循環を実現し、地域になくてはならない企業グループであり続けることを目指してまいります。
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