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vol.127できることから温暖化防止
2019.5.27
地球温暖化に影響を与える家庭から排出される二酸化炭素(CO2)などの温室効果ガスは、年々増加傾向にある。行政や企業任せではなく、今こそ一人一人が日常生活を意識的に見直し、できることから温暖化防止に取り組む姿勢が求められている。今回は、幼児期の環境教育に力を注ぐ幼稚園と公共交通機関の利用促進の取り組みを紹介する。
取り組み1 美哉幼稚園 境港市
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手洗いは水道水をジャージャー出さずに鉛筆の直径くらいの少量で行うなど、節水が浸透している |
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古紙を回収して再生紙になる過程をイラストで説明。意味が分かることで子どもたちのリサイクル意識は高まる |
幼保連携型認定こども園美哉幼稚園(境港市明治町、遠藤美和園長、136人)は、熱心な環境教育を通して、子どもたちの生きる力を育んでいる。2003年12月には国の「地球温暖化防止環境大臣賞」を受賞するなど、その取り組みは高い評価を得ている。
同園は、浄土真宗本願寺派本巌寺を母体として、1927年に創立。29年に教育施設として認可された。幼児期に命や心の教育を行うことを目的に開園しており、環境教育はその延長線上にあることから、98年4月、保育カリキュラムに本格導入した。
同園の環境教育は「知る」「理解する」「考える」「行動する」の順で実践。水やごみ、エネルギーの問題について、子どもたちに分かりやすく理解させる工夫を取り入れている。
水の無駄遣いや大量の食品廃棄が環境に負荷を与えることを理解させ、節水や食べ残しをしないといった日常生活で取り組めるエコ活動を指導するほか、資源ごみの回収では、どのように再利用されるのかをイラストなどで説明し、リサイクル意識を高めている。主幹保育教諭の池淵誠司さん(36)は「子どもたちにごみを増やさない意識が芽生えている」と手応えを感じている。
2018年5月、鳥取県地球温暖化防止活動推進センターの出前エコシアターを同園で開催した際には、保護者も参加した。環境に対する意識は、子どもから保護者に伝わり、家庭でも徐々に取り組むなど広がりを見せている。同園も、CO2排出量を計算し記録する「環境家計簿」を20年間続けており、園全体の省エネ意識向上を目指している。
保育カリキュラムに環境教育を取り入れた元園長で、現在事務局長を務める西元三四子さん(75)は「地球温暖化は命あるもの全てへの警告。幼いときからの環境教育がとても重要」と訴えている。
取り組み2 100円循環バス「くる梨」 鳥取市
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鳥取市内を走る循環バス「くる梨」。各コースとも20分おきに出発する |
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ノルデ運動のキャラクター「ノルデーズ」 |
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緑、赤、青とコース色別に分かりやすく表示されたバス停。運賃100円の文字が目立つ(鳥取市) |
鳥取市は、車から出る二酸化炭素(CO2)の排出量を削減し、環境の保全と推進につながる公共交通機関の利用増を目指している。10月の新本庁舎の開庁に向け、JR鳥取駅を発着点に赤、青、緑の3路線で同市の中心市街地を循環する100円循環バス「くる梨(くるり)」の路線再編を計画中で、利用促進キャンペーンも検討している。
同市は、2012年度から市民に公共交通機関の利用を呼び掛ける啓発活動「ノルデ運動」を行っているが、まだまだ通勤などにマイカーを利用する人は多い。家庭から排出するCO2の内、車が約2割を占める状況(世帯当たり、用途別)の改善にも、公共交通機関の利用が望ましいとみている。
くる梨は、同市が運営し民間の2事業者に運行委託する3者連携事業。来街者や観光客、中心市街地に居住する人々の生活の利便性向上などを目的に04年に運行を始めた。ワンコイン(100円)で気軽に利用できるのが特徴で、身体障害者、療育、精神障害者保健福祉手帳などを持つ人と介護人は運賃が半額、小学校入学前の幼児や鳥取市子育て支援カードを持つ人は無料となる。小型の低床車両で車内にスロープを設けるなど、高齢者や体の不自由な人に配慮した車両を導入している。
18年度の年間利用者数は約39万7千人。13年度に緑コースを増設した際、約7万2千人増え、現在もなだらかな右肩上がりを続けている。急速に進む高齢化など社会課題の変化に伴い、くる梨への期待もさらに高まりつつある。80代の利用者は「買い物で毎日利用する。便利で助かっている」と話した。
同市交通政策課の筒井真二課長補佐は「今秋の路線変更で循環するエリアが広範囲となり、サービスは向上する。この機会に積極的にPRしたい」と意気込む。
気候変動時代を生きる
気候変動と紛争の関係
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メキシコからアメリカに向かうため、トラックに乗り込む南米からの難民(シャッターストック提供) |
異常気象を異常と感じないほど、恒常的に気象災害や健康被害などが発生するようになりました。一方、難民や国際紛争なども各地で頻発しています。一見すると、関連していないようなこの二つの問題は、実は案外シンプルに結ばれています。
2015年にケンブリッジ大科学政策センターより発表された「気候変動のリスク評価」では、地球温暖化による気温や海面上昇が土地の生産性を劣化させ、農地や水源など土地を巡る問題が表面化すると報告されています。特に、中東やアフリカなど深刻な情勢不安を抱えた地域では気候変動問題が駄目押しして紛争を引き起こし、行き場を失った多くの人が難民化すると伝えています。
例えばシリア問題は記憶にも新しいと思います。ヨーロッパにおける自国主義台頭の要因は、これら難民を受け入れることへの賛否から生まれたともいわれます。さらに、以前は欧州へと渡っていた南米からの難民は、シリア問題で海岸線が封鎖された欧州を諦めてアメリカに向かい「エクソダス(大量脱出)」へ、そしてトランプ大統領の「国境の壁」問題へ発展したとみられています。
SDGs(持続可能な開発目標)の17の目標のうち、地球温暖化問題に係る「Fエネルギーをみんなにそしてクリーンに」「L気候変動に具体的な対策を」は「J住み続けられるまちづくりを」「@貧困をなくそう」「A飢餓をゼロに」「Bすべての人に健康と福祉を」などの目標達成にも貢献するということになります。
気候変動と紛争との、とても深刻かつシンプルなつながりは、逆から見ると温暖化対策と国際人道問題との同時解決の可能性を秘めていることにもなります。
(鳥取県地球温暖化防止活動推進センター・山本ルリコ)
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