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vol.164 「食品ロス」削減推進
2023.02.25
まだ食べられるのに家庭や事業所から廃棄されてしまう「食品ロス」は資源を無駄に使い、環境負荷を招く。焼却や埋め立てなど廃棄処分には多くのエネルギーを費やすほか、二酸化炭素(CO2)を排出して地球温暖化を助長したり、土壌・水質汚染などを引き起こすことも。国は2030年度に、日本国内の食品ロス発生量を00年度比で半減できるよう取り組みを推進している。その実現には一人一人の「もったいない意識」を高め、消費行動を変えていくことが求められそうだ。
鳥取大地域学部 大元 鈴子 准教授に聞く
「知産知消」で食べきり意識 生産者をもっと大事に
食べ物があふれている日本で食品ロスの削減が社会的な課題となっている。一方で日本の貧困率は先進国の中でも高く、全国各地に設置された「こども食堂」や地域食堂が果たす役割は大きい。消費者や生産者は食べ物とどう向き合えばよいのか。フードスタディーズ(食の研究)を専門とする鳥取大地域学部の大元鈴子准教授に聞いた。
−食品ロスの問題について鳥取県民の意識は。
私のゼミ生が鳥取市地域食堂ネットワークや食品を寄付している企業を題材に卒論を書いた。全国的にも同様だが、鳥取県内でもこども食堂やフードパントリー(食品を無料提供する支援活動)、フードドライブ(家庭で余った食品を寄付する活動)が身近なものになり、県民の意識は徐々にではあるが、着実に高まっていると感じている。
−食べきり協力店の登録促進など対策への期待と課題は。
学生がアルバイトをしている鳥取市内の焼き鳥店で、昨年秋に店長の許可を得て客の食べ残しの調査を行った。日によっては相当の食べ残しがあったが、「なくそう食品ロス」のポスターを掲示後は、多少その量が減ったことが分かった。規模の小さい飲食店でも食べ残しを減らす意識が高まっていると思う。
海外では食べ残した料理を家で食べるため、容器を提供する店が多い。日本では「持って帰っていい」という店は少ない。食中毒の責任の所在の問題があるが、海外では客の自己責任としている。日本でも持ち帰りができればと思う。
日本は食があふれている豊かな国だが、世界的に見るとそうではない地域があることを想像しきれていない。日々の食品の価格は気にするが、飲食店では平気で食べ残しをする矛盾がある。提供する側と食べる側の双方のコストを減らす工夫として、食べ残しのデータの公開なども面白いかもしれない。
−食品を食べきるためにはどうすればよいか。
地産地消を「知産知消」と書き換えると、もっと自由に地域の食とつながることができる。どこで作られたものか、どこで消費されるのか、消費者と生産者がお互い知ることが重要だ。古里のおばあちゃんが送ってくれた食べ物は大事に食べるように、生産者のことを知れば食べきりにつながる。生産地と消費地の距離の近さもそうだが、生産者と食べ物との関係性がより大事だ。
−食べ物との向き合い方は。
ウクライナへのロシア侵攻やコロナ禍で食品の輸出を禁止する国があり、肥料の価格も上がっている。食品輸入に頼る日本で食べ物が簡単に手に入る時代が長くは続かないかもしれないことを認識すべきだ。日本の生産者を大事にしないと先は危ない。インターネットでも生産農家と直接つながる手段は格段に増えた。生産者と直接つながることが楽しいと思える「生活者」も多いはずだ。
わたしたちのちょっとエコアクション ながらエコ、ついでエコ
暮らしの中でエコにつながる行動はさまざま。中でも「何かをしながら」「何かのついでに」できると気負わずでき、続きそうだ。おしゃれをしながら、運転しながら、ゲームをしながら。買い物のついでに、片付けついでに、歩いたついでに。肩ひじ張らず、手軽に取り組む県民エコ活動を紹介する。
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段ボールの中で生ごみを堆肥化してエコ
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Q あなたのエコ活動は? 内藤 威さん(米子市)
A 段ボールコンポストで生ごみを堆肥化してエコ
水を含む生ごみを可燃ごみとして焼却するには余分な燃料が必要です。使い捨ての風潮に対して何かできないかとも考え、1年半ほど前に始めました。「使いきり」「食べきり」「水きり」が基本ですが、どうしても出てしまう生ごみは毎朝、みじん切り器で細かくして段ボールのコンポストに入れます。長野県の一部自治体は、無料の可燃ごみ袋「生ごみ出しません袋」を配布しています。直接的なメリットとして感じられる施策を後押しに、鳥取県でも堆肥化がもっと広まればと願っています。
フードドライブ拡大 持ち帰りバッグ普及に力
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バラナシ市の公衆トイレに設置した同社の汚水処理システム。奧の建物は隣接する小学校(2019年4月、大成工業提供) |
日本国内では2020年度、年間522万トン(事業系275万トン、家庭系247万トン)の食品ロスが発生したとみられている。これは国民全員が毎日茶碗1杯分ほどのご飯を捨てているのとほぼ同量。鳥取県と米子市が19〜20年度に行った家庭ごみ調査でも、可燃ごみ全体の約11%、生ごみの約30%を食品ロスが占めていた。
国は「食品リサイクル法」(01年5月施行)や「食品ロス削減推進法」(19年10月施行)を制定するなど、30年度に食品ロスを489万トンまで削減する目標を掲げており、自治体、事業所、飲食店、小売店、個人などで具体的な取り組みが進む。
このうち、鳥取県は家庭や事業所で余った食品を集め、必要としている人の元へ届ける「フードドライブ」活動を拡大。食べ残し持ち帰りバッグの普及などにも力を入れている。
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