特集一覧 |
2024
2023
2022
2021
2020
2019
2018
|
|
|
vol.159 エコとファッションの両立
2022.9.28
例えば、資源削減やレジ袋の有料化に伴い、生活の必需品となったエコバッグ。機能性、デザイン性に優れた“お気に入り”があれば、使用頻度は自ずと高まる。目指すのは「エコとファッションの両立」。作り手、買い手の意識の変化により、日々の暮らしに取り入れてみたくなるような、環境に優しいおしゃれなエコグッズも増えつつある。
必要以上の物買わない オリジナルを作り出す
公立鳥取環境大 経営学部 連宜萍准教授に聞く
|
手に持っているのは、Tシャツを再利用したグッズ |
アパレル産業は、環境負荷が極めて大きいと言われるが、近年は「サステナブル(持続可能な)」や「エシカル(人や環境、社会に配慮した考え方や行動)」をファッションに取り入れる動きがある。ファッションの観点から環境問題との向き合い方について、公立鳥取環境大経営学部の連宜萍准教授に聞いた。
−環境経営を心がける企業が増えている。ファッション業界での広がりは。
店内に回収ボックスを置いて、不要となった自社製品を集めるアパレル企業が増えている。一方で、服に限らず不要品を海外に寄付することが、100%環境問題の解決につながるわけではない。ミャンマーに自転車を寄付しても、道がでこぼこで結局使われない事例もある。日本で出した物は、日本で処分するべきではないか。そして難しいことだが、大量生産・大量消費にならないようバランスをとることが大事。
−リサイクル素材を使った洋服も増えている。
ペットボトルやプラスチックを再利用することは一見問題がないようでも、ペットボトルを燃やすと大量の排気ガスが出る。そのプロセスが見逃されがち。洋服のタグにも注目してほしい。ナイロンやポリエステルは、化学繊維でできている。綿は天然素材だが、現在は消費が多く、自然と調和して作ると生産が追いつかないため、遺伝子組み換えの物が多い。
−洋服の廃棄を減らすために必要な対策は。
必要以上の物を買わないこと。タグが付いたまま、1度も着ていない服はないか見直してほしい。「安いから」「いつか着られるから」と買っても1度も着なければ、廃棄になる。カンボジアなどの縫製の仕事をしている人々にも失礼にあたる。
−注目している企業の取り組みは。
ブランドの価値を守ったまま、廃棄される服を減らす取り組みがある。アパレル企業から余ってしまった服を買い取り、タグを取って自社のタグに付け替えて再販する仕組みで、商品の換価や燃料費などの廃棄コスト削減につながる。
−「エコ」を楽しく、おしゃれに取り入れられるアイデアは。
不要となった服を、自分で再利用してみてはどうか。ジーンズを財布にしたり、カップに入った飲み物を運びやすくするために、Tシャツとひもで、持ち手付きのカバーを作ったりしている。オリジナルのものを作り出すのは楽しい。インターネットに掲載されている、ペンケースやかばんなどの型紙を使って作るのもお勧め。少しずつでも一人一人が取り組めば、問題解決につながる。
間伐材 おしゃれ変身 素朴な風合いが人気 軽くて機能的アクセサリー
|
どんな服装にも合わせやすいと評判のアクセサリー |
適切な森林管理により生まれる国産間伐材を有効活用して作られたアクセサリーなどは、言わずと知れた自然環境保護にも役立つエコグッズ。軽くて機能的、何よりも木の素朴な風合いが、幅広い年代層に支持されているようだ。
智頭町郷原の木製品工房「ASNARO」(小畑明日香代表)は、「エコロジー」「サステナブル」「ローカル」の3要素を満たす素材「エシカルマテリアル」でアクセサリー、雑貨などを製作し、求めやすい価格帯で販売。土産物や大切な人へのプレゼントとして使われることも多い。
2016年の創業当初から、主に地元のヒノキを使って製作しているアクセサリーはヘアゴム、ブローチ、ネックレス、ピアスなど。花、和柄、レンコンなどをモチーフにした商品が売れ筋だ。
小畑代表は「普段身に着けるものだから、エコを意識してもらいやすい。素材となっている智頭のスギ、ヒノキの良さも知ってもらえたら」と話している。
気候変動時代を生きる
地域資源利用した“脱炭素時代”へ
今年は、ヨーロッパから日本に至る熱波から、パキスタンでの洪水まで、気候危機による被害が頻発しています。鳥取県では先月、激しい雷雨で停電もあちこちで起き、つい先日は数十年に1回の台風が日本列島を襲いました。私たちは気候を守るために二酸化炭素(CO2)排出を少しでも早く減少させなければなりません。
最近、ある団体の講演会で「産業革命以降の地球の平均気温は何度上昇したか」と聞いたところ、ほとんどの人が「3度から5度」と答えました。約1・1度が正解ですが、多くの人が「たった1度?」という反応でした。そのたった1度で大きく気候が変動するほど地球はデリケートです。恐竜の大絶滅期でもこんなに短期間での変化は起きていないのです。
今のペースでCO2などの温室効果ガスを排出し続けると今世紀末までに最低でも4度は上がると言われています。今より3度も気温が上がる地球なんて、想像したくもありません。そこで世界中で、今世紀末の気温上昇を産業革命以前と比べ1・5度以内に抑えるため、2050年実質排出ゼロを目指し、削減努力をしています。
そのさなか、ロシアのウクライナ侵攻でエネルギー危機が起き、当面をしのぐため、火力発電などの稼働を増やす動きもありますが、ヨーロッパでは座礁資産化すると嫌がる電力会社もでる始末です。欧米では最終的には化石燃料に頼らない産業を目指し、脱炭素を最重要課題として優先しています。日本でも大企業を中心に再エネ投資も活発です。化石燃料に下駄がはかされた時代から、地域にある自然の資源を効率よく利用する脱炭素時代への移行が始まっています。
(ECOフューチャーとっとり 山本ルリコ)
地域を支える環境(エコ)活動
鳥取県生活協同組合
(鳥取市河原町布袋、井上約理事長)
積極的にリサイクル活動
|
リサイクルのため、組合員(左)から卵パックと牛乳パックを回収する職員 |
環境への負荷を軽減するため、配送時に届ける商品カタログや紙パック、内袋、卵パックなどを回収し、組合員によるリサイクル活動に積極的に取り組んでいる。リサイクル品は広島県尾道市にある中国5生協のエコセンターで圧縮加工し、資源リサイクル業者に売却している。
また、二酸化炭素の排出削減のため配送コースを見直し、配送車の軽油使用量は前年比96.2%と大きく削減した。鳥取市内2カ所には太陽光発電設備を設置。倉吉市での「CO・OP虹の森」事業、八頭町での「ふなおか共生の里づくり」事業に長年取り組む。「もずく基金」によるサンゴ礁を守る活動や米子市淀江町で名所を歩き、ごみを拾う活動も企画した。
株式会社 建販
(鳥取市叶、山内智晃社長)
“自然”利用した家づくり
|
地域の木材を利用し、エネルギーの循環と自立ができる家を提案 |
スギやヒノキなど地元の木材を使った住まいを提供。世代を超え長く愛着を持てる住宅が、持続可能な地域づくりを目指す鳥取に一軒ずつ溶け込む。
一貫して提案してきたのは、自然エネルギーと自然素材を利用した家づくり。太陽光で発電しながら同時に熱利用も行う「OMソーラー」を採用。ユニット1台で家全体の冷暖房に加え「お湯採り」「全熱交換換気」を実現している。また、自然素材の特徴を生かしたシンプルな意匠と高い断熱性・気密性など建物を支える構造材の性能の高さを両立させてきた。
二酸化炭素の排出ゼロを目指し、エネルギーの循環と自立ができる家でありながら、快適さも手放さない。毎日の暮らしそのものが省エネ活動になる住まいでの暮らしによって、自身を取り巻く環境問題への気づき、次への行動変容につながればと考えている。
|
|