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vol.134 電動車で代替エネルギー活用
2020.2.27
電気自動車(EV)やプラグインハイブリッド自動車(PHV)などの電動車は、低炭素社会の実現に向けた地球環境に優しい次世代カーとして普及が期待される。一方、電動車の持つ蓄電・給電機能が、家庭での省エネ化の実現や再生可能エネルギーの効率的利用、災害時の代替エネルギーとして、新たな価値を創り出す。電動車に搭載した蓄電池の可能性について紹介する。
災害時に役立つ蓄電
個人の登録都道府県初 「とっとりEV協力隊」設立
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電動車から電力供給してイルミネーションの一部を点灯(昨年12月、鳥取砂丘イリュージョン) |
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自宅にV2Hを設置すると、電動車両から給電できる |
鳥取県は昨年9月、電動車を災害時の緊急電源や屋外イベントの代替電源として活用しようと「とっとりEV協力隊」を設立。同車を所有する県民や県内のカーディーラーに参加を呼び掛けた。登録者は、停電などの緊急時に車両の駆動用バッテリーに蓄えた電力を外部給電器を使って避難所などに供給する。同様の取り組みは他県でも行われているが、個人に協力を呼び掛けるのは都道府県単位で全国初。今年1月末現在、個人、法人合わせて約40台が登録している。
同協力隊の設立は、激甚化する自然災害に伴う大規模停電時の備えとして、非常用電源を確保することが狙い。災害時に発生することが多い停電の長期化で、被災者が不便な生活を強いられたり、救える命を救えなくなることがないよう、電動車の蓄電機能に着目した。設立後は日南町総合防災訓練と鳥取砂丘イリュージョンで活動を行った。
太陽光発電固定価格買取制度(改正FIT法)の買取期間が昨年11月以降順次満了となり、今後は再生可能エネルギーの自家消費率が高まり、蓄電池の需要増が予想される。県は、蓄電池の普及促進の取り組みに、各家庭で発電した太陽光発電システムの発電電力と電動車の蓄電電力を家と車で自在に融通できる機器(ビークルツーホーム、V2H)の導入支援も加え、車載蓄電池を低炭素社会の実現に向けた新たな価値として訴求したい考えだ。
県環境立県推進課次世代エネルギー推進室の担当者は「再生可能エネルギーの地産地消を促し、炭素排出を抑制した自立分散型の地域エネルギー社会を構築したい。蓄電池やV2Hの導入費用に関して、補助金メニューがある市町村もあるので活用してほしい」と話している。
具体的実践例と課題
避難所全体供給に驚き 加藤幸児さん 日南町
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真剣な表情で訓練に参加する加藤さん |
日南町在住の加藤幸児さん(66)は、とっとりEV協力隊の一人。昨年9月、同町矢戸の日野上地域振興センターで行われた総合防災訓練に参加し、所有する自家用EV車を提供して電力の供給作業を体験した。
訓練は、避難所に見立てた同センターが停電したとの想定で行われ、電動車のバッテリーから電気を取り出し、外部給電器とつないで施設内に電力を供給した。
加藤さんは「EV車一台で施設全体に電力を供給できることに驚いた。町内には水道配管がなく、井戸水を家庭用ポンプで利用している地域もあり、高齢化などで停電になるとたちまち水が使えなくなる危険性がある。地域ごとに外部給電器の整備を求めたい」と訴える。
停電長期化容量持つか 武本クリニック 米子市
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V2Hはボタン一つで簡単に充電と給電を切り替えることができる(武本クリニック) |
米子市西福原の武本クリニック(武本祐院長)は、同一敷地内の薬局とともに、山陰初の災害対応型クリニックモール「米子スマートクリニック」として、2018年11月に開院した。太陽光発電や最大700リットルの雨水タンクの設置に加え、V2Hシステムを導入して、同院が所有するEV車から院内に電力を供給できるようにしている。
災害に対応したシステムの導入は、11年の東日本大震災と、その後毎年のように全国各地で多発する自然災害のリスクに備えることがきっかけとなった。車載蓄電池で、万が一停電が発生した場合に、診察に最低限必要なカルテや血液検査の電力を賄うことができるとしている。
武本院長(34)は、「病院の維持だけでなく、地域のためにもなる」と期待する一方、「医療機器は電力を大量に消費するので、停電が長期化した場合、復旧するまで持ちこたえることができないのでは」と、蓄電池の容量など技術的課題も指摘している。
気候危機 日本の常識 世界の非常識
福祉と地球温暖化対策
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車いす使用者に配慮されたドイツ・ベルリンの市バス |
どうしてドイツはこんなに障害者が多いのか−。私が20年ほど前海外生活を始めたころ、街を行く車いす使用者の多さに驚きました。実際には公共交通やインフラが整っており、車いす使用者が介助なしでも安心して外出できることを知らなかっただけでした。
当時、子育て中だった私は、ベビーカーを畳まなくても便利に出掛けられ、しかも便数が多く運賃が駐車場代より安いので、自家用車を持っているにもかかわらず、公共交通を頻繁に利用していました。さぞかし赤字だろうと尋ねると「公共交通は福祉なので安くて当たり前」という返答でした。赤字分は再エネ発電や地域熱供給中心の地域エネルギー公社の黒字で補填(ほてん)するというのです。
福祉と地球温暖化対策などを総合的に経済に組み込む仕組みが、現在日本各地で立ち上がっているシュタットベルケといわれる地域エネルギー公社です。世界では「地球温暖化対策は生活の質を向上させる」と考える人が多いのに対し、日本では逆に「生活の質を脅かす」と考える人が多いという報告があります。もし日本の交通網も福祉の観点で整っていて、それが地球温暖化対策につながると理解できたなら、このような報告結果になっていないでしょう。
平井伸治鳥取県知事は1月の定例記者会見で、2050年に二酸化炭素排出をなくすゼロカーボンシティ宣言をしました。異常気象に脅かされない社会にするためには、県民一人一人の心掛けだけでは到底間に合いません。便利で豊かに暮らす地球温暖化対策の仕組みづくりが求められているのです。
(鳥取県地球温暖化防止活動推進センター 山本ルリコ)
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