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vol.198 森林・里山を未来へつなぐ
2025.12.29
森林の荒廃や里山の担い手不足が深刻化する中、森林・里山の価値を見つめ直し、地域の自然を次世代へつなごうとする動きが広がっている。里山の資源を循環利用する取り組み、また、木と触れ合い、その恵みを学ぶ木育活動など多様な主体が知恵を持ち寄り、持続可能な環境づくりに挑んでいる。実践団体の一部を紹介する。
讃郷愛林協会(倉吉市) 「植える、育てる、使う」
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| 整地した竹林でモミジなどの植樹活動に精を出す会員ら |
「故郷をたたえ、森林を慈しむ」という意味を込めた会名の下、鳥取県中部の里山を舞台に森林保全活動を続ける。苗木の植樹のみにとどまらず、木の育成や整備、活用というサイクルを構築し、持続可能な里山づくりを目指している。
会は約30年前、三朝町や交流のあった中国での植林活動に力を注いでいた故田栗栄太郎さんが設立。栄太郎さん亡き後は5年ほど休会状態だったが、「人が介入し、荒れ果ててしまった山林を元の姿に戻したい」と長男の栄一さん(72)=倉吉市=が遺志を継ぐ形で2006年、設立当時の仲間や新たな同志を募って活動を再開させた。
活動の場は、倉吉市と三朝町の旧採石場や荒廃した果樹園の跡地など。整地してクヌギやケヤキなどを植え、大きく育った樹木はシイタケのほだ木や薪(まき)などに使う。また、湯梨浜町にある竹林の管理も担う。栽培したタケノコを加工して学校給食に提供する地産地消事業のほか、モミジやヤエザクラを植樹して里山を観光資源として生かす取り組みにも挑戦する。
会には現在50人ほどが在籍。活動には鳥取大生でつくるボランティア団体も参加するが、事業が多岐にわたることでスタッフの確保は長年の課題だ。会長の栄一さんは「“植える、育てる、使う”が会の信条。地域の里山を維持していくためにも未来を担う人材は必須。里山に親しみ、まずは自分たちが楽しみながら続けていける活動にしたい」と力を込める。
木育サポート 森のきこりん(琴浦町) 子どもに木工の魅力を
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| 木育授業で、こま作りに挑戦する子どもたち |
木育活動を通じて森林や自然環境に対する関心を高めたい−。家業が建具店だった前代表の呼びかけで10年前、有志ら3人で「きこりん」の活動がスタート。木のおもちゃ作りや遊び、鳥取県内で森林散策やブナの植樹などを催し、子どもたちに木工の魅力や森林の大切さを伝えている。
メンバーは、父親が大工をしていた代表の森下義雄さん(74)=琴浦町、副代表の戸田智美さん(65)=同=を中心に17人1法人で構成。県内の木育の専門家や森林保全団体と連携し、木と触れ合う催しを年間12回程度催している。
琴浦町の浦安小2年生を対象にした「こま作り教室」は、学校の授業の一環として、発足当時から続く取り組み。今年9月に行われた同教室では、子どもたちがメンバーらの指導を受けながら、電動ドリルで木材の円盤に穴を開けたり、木づちで心棒を打ち込んだりする作業に挑戦。自分だけのこまを完成させると、昔ながらのこま回しなどをして楽しんだ。
「自分で一生懸命作ったこまには愛着も湧く。木のぬくもりを感じてほしい」と戸田さん。森下さんは「自分たちの暮らしと森林の役割、自然との共生に少しでも思いを巡らせてもらえればうれしい」と期待を膨らませている。
わが社の環境(エコ)活動
株式会社白兎環境開発
鳥取市千代水4丁目/奥田貴光社長
スポーツ通じ、児童を応援
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| 拾い集めたごみを分別する児童ら |
産業廃棄物と一般廃棄物の処理、リサイクルを中心に手がける。海岸清掃を通じ、子どもたちに環境問題への意識を高めてもらう活動にも力を入れる。
毎年6月、スポーツに取り組む児童を応援し、環境保全意識を高めるイベント「HA(ハ)KU(ク)TO(ト) DAY( デイ )〜少年少女スポーツ応援企画」を開催。今年も鳥取市内の3小学校の野球チームに所属する児童と保護者ら約130人が鳥取市の賀露みなと海水浴場に集まり、木くずやペットボトルなどを次々と拾い集めた。ごみはコンテナ3杯分にもなり、児童たちは分別方法も学んだ。
また、元プロ野球選手らによる野球教室と交流試合も開催。スポーツを通じ、地域の未来を担う子どもたちを応援し続けている。
#私たちのグリーンムーブメント−若き担い手たち
公立鳥取環境大「学生EMS委員会」
地域巻き込み環境を考える
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| 学生や地域住民向けの環境トークセッションの様子 |
学生たちが環境課題の解決に挑み、地域を巻き込んだ活動を広げている。設立から23年、約50人が所属。環境管理の国際規格「ISO14001」に基づく環境マネジメントの学生組織として始まった同委員会は、脱炭素イベントの企画や企業連携まで担う存在へと成長した。
週1回の定例会議に加え、脱炭素、環境教育、サステナブルキャンパスなど複数のプロジェクトを企画・運営。行政や企業、地域住民も参加する「TUES(チューズ) Sustainability(サスティナビリティー) Week(ウイーク)」には約200人が来場。紙パックの再資源化によるハンカチやキーホルダーの作製など商品開発にも取り組む。こうした活動が評価され、県主催の「脱炭素チャレンジカップ」学生部門を受賞するなど信頼も高まっている。
一方で、学生数減少や運営資金の確保といった課題も抱える。同委員会は交流サイト(SNS)発信を強化し、新入生が参加しやすい環境づくりを進める方針だ。
部長の山中瑚々さん(環境学部2年)は「地域と学生をつなぎ、多様な世代が環境について考えられる場を広げたい」と意気込んでいる。
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